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《金銭感覚》
やはり少し天然パーマな毛質で髪をといてもウェーブが残る。
「あずまさん天パっすね」
「そうなんだ、だから髪を短くすると跳ねてしまってね、いつも後ろで縛れる長さにしているんだ」
「なるほど」
確かに今もギリギリうしろで結べる長さがある。
あずまの服は季節感が冬なので、とりあえず俺のTシャツと短パンを貸して着てもらう。
毛染めの甲斐もありかなり若返ったあずま。
間違ってもホームレスには見えない。
これだけ変身できるなら、いつか服もちゃんとコーディネートしたい欲求にかられる。
その後、あずまを連れて近所のラーメン屋へ。
緊張した面持ちのあずまに明るく話しかける。
「はい!メニューです、好きなの頼んでください」
「一杯780円…」
メニューを開きポソっと呟く。
「ん?どうしたんすか?」
「780円あれば一週間分の食費になる」
「え、一日百円で過ごしてるんすか!?どうやって?」
「店で麺は30円ほどだ、20円のモヤシや安い麩を水でふやかして食べれば50円で済む…」
それも、買う時は極力期限切れや廃棄寸前の格安で売っている店に行って手に入れることにしているから、こんな贅沢なものは…。
「……」
あずまが呟く食材は、栄養が全く取れそうにない組み合わせ。
そりゃ痩せるわ。
「あずまさん!!」
「はい?」
突然大声で呼ばれ驚くあずま。
「今は値段のことは考えなくていいから、食べたいものを注文してください!」
メニューの値段の書いてあるところを隠しながら言い切る。
「…勿体無いな」
「いいんです!」
「……」
どれも高そうで決めきれない様子のあずま。
「じゃ、今日は俺のおススメでいいっすか?あずまさんは今度来るまでに食べたいの決めといてください!」
「あぁ、今度…?」
「また来ましょ」
「私は、こんな店に来れる身分じゃないから」
文無しが来ていい場所じゃない。
「俺はまた来たい、あずまさんと来たいです」
まっすぐあずまの瞳を見つめ、そう求める。
「…うん、ありがとう敬大くん」
少し視線を逸らし困惑しながらも、そんなことを言われたら嬉しくて、小さく頷く。
そうして、美味いラーメンを食べ、アパートに二人で戻り。
その日も一緒に風呂に入った。
風呂上りに声をかける。
「あずまさん、これ」
「ん?」
「プレゼントです」
そっと手渡す。新品のあずまの為に買った…
「歯ブラシ…」
「一緒に住むならいるでしょ」
「あぁ、いいのか?」
「もちろんです」
「ありがとう」
顔を綻ばせ、両手で受け取る。
「じゃ、一緒に歯磨きして寝ましょ!歯磨き粉は俺の使ってくださいね」
「あぁ…」
あずまと歯磨きも並んで行って、今日も一緒のベッドで眠りについた。
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