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《強者と弱者》
「……」
やはり仕事は簡単には見つからない、また日を改めて…とりあえず今日も空き缶を集めて、少しずつでも金にするか…
そう俯き歩いていると…
「おい、オヤジ!」
不意に腕を掴まれる。
若い三人組の男達。
あっという間にビルとビルの間に引き込まれた。
「……な、なんだ?」
「なんだ?なんか金目のものは持ってねーのかよ?」
「何もない、だからここに来たんだ、職を探しに」
「そうかよッ」
いきなり殴りかかってくる男。
「う、くッ!」
抵抗もままならず、2、3発顔を殴られる。
さらに拳を振り上げる男に…
「や、やめてくれ、何もない!」
両手を挙げて、早々に降参する。
「ホームレスにしてはいい服着てるじゃねーか」
「これは借り物で…」
「うるせぇ」
「金持ってるだろ」
男らはあずまを押さえつけ、勝手にカバンやポケットを探り出す。
「っ、やめ…くっ」
「ちっシケてんな、670円しか持ってねーぜ」
小銭を奪い取り、あずまの腹を殴りつける。
「ッ、返し…ッ」
「うるせーよ、殺されたいのか?」
再びあずまを蹴り飛ばす。
「ッ、くっ」
「はははッ金取られたくなかったら二度とくるなよジジイ」
怯え転がるあずまをさらに、蹴って暴力を振るう男達。
痛みに耐えながら、なんとか路地奥へ逃げるように立ち去る。
「ハァ、ハァ…痛っ」
仕事は取り合いだ、弱いものは弾き出される。
容赦なく蹴られ殴られて、口の端が切れてしまった。
公園で口を洗い、足跡のついてしまった借り物の敬大の服をはたき綺麗にして、人目につかない端のベンチで傷めつけられた身体を休める。
「はぁ…」
再び一文無しになってしまった。
少しでも金を貯めて、敬大くんにお礼を渡したいのに。
「やっぱり駄目か…」
見た目が少し良くなったからと言って、本質は変わらない。
仕方なく、一から空き缶を集め始める。
自分のような者が仕事を得るのは、簡単なことじゃない。
身体の痛みをこらえながら、陽が傾くまで空き缶集めをして回り、敬大のアパートに戻る。
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