34 / 36
《喪失感》
大学もバイトも休みで、今日は一日、あずまさんと過ごせる予定だったのに…
突然やってきた両親と買い物に行って、ご飯を食べた。
あずまさん、ご飯食べれたかな…ほとんどお金持っていなかったから。
朝食用のパンだってそのまま…
あずまの名前の書かれたパンが冷蔵庫には残っている。
名前を書いていないとあずまは遠慮して食べてくれないから…
両親が帰ったら、公園に逢いに行こう。
あずまさんに何か食べ物を買っていこう。
それで、またうちに呼んで、元どおりだから…
しかしーー。
約束の場所に、あずまが現れることはなかった。
「あずまさん!?あずまさん!!どこだよッ!!」
公園内を呼んで探すが、見つからない。
深夜まで待ったけれど、あずまは来なかった。
帰宅して、風呂に入ろうとして浴室内の壁にメモが貼ってあることに気づく。
敬大くんへ
君と出逢えて私は幸せだった。忘れかけていた人の温かさ、優しさに触れることが出来たから。君は一人の人間を幸せに出来たんだ誇りに思って生きてくれ。君のことは一生忘れない。本当にありがとう。元気で。鼓按司眞。
なんだよこれ…
まるでさよならみたいじゃないか…
すぐ逢えるって言ってただろ!
次の日も、次の日も…
あずまの姿はどこにも見当たらなかった。
あの日以来、彼は忽然と姿を消してしまった。
俺があげた歯ブラシもあずまが持って行って…
この部屋に、あずまがいた痕跡は何一つ残っていない。
こんなに繋がりが希薄だったなんて…携帯電話なんかなんの役にも立たない。
食べるのにも困るほど、お金がないんだ、歩いて移動できる範囲にいるはず。
毎日ランニングコースを変えて、あずまを探して回った。
けれど、一向に見つからない。
もう一度逢いたい、あの笑顔に触れたい…
その願いは空回りで…
なんで、
またすぐ逢えるって言ったじゃないか…
どこ行ったんだよ!
あずまさん!!
ともだちにシェアしよう!