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夢から現実へ 3
突然、部屋のチャイムが鳴った。
時計は23時。こんな時間にくる人物の心当たりは一人しかいない。
激しくドアを叩き、
「開けろ、居るんだろ!」
と大声で怒鳴る。
怖くて、口を押えながら部屋の片隅で丸くなる。はやくあきらめて帰ってほしい。
すると外から誰かともめる声が聞こえ、ドンっとドアが大きな音を立て、そして静かになった。
豊島は立ち上がり玄関へと向かうとドアスコープから外を覗く。そこからは誰も見えない。
ホッとしたら力が抜けて、そのまましゃがみ込み、今だ震えの止まらぬ身体をぎゅっと抱きしめた。
一睡もできないまま、朝を迎えてしまった。
今日は一限目から授業がある。用意をして行かなければならない。それに真田と、彼の友達と飲む約束もしている。あとで連絡があるだろう。
行く前に冷えた体を温めようとバスルームへと向かい、シャワーのコックをひねり温度を熱めに設定した。
冷えた身体が熱で温かさをとりもどし、やっと気持ちも落ち着いた。
身体を拭いて鏡の前に立つ。頑張った成果。肌はすべすべになったし、身体も細くなった。しかも自分に自信が付いた。
だが、悪い面もある。友達ではなく性処理目的に使われたことだ。
心は拒否をしているのに身体は気持ちよいところへと触れられたら反応してしまう。
真田にはけしていえない。本当はレイプもされたことを。
身なりを整えてカバンを持つと玄関の扉の前に立つ。昨夜のこともあるので外に誰もいないかを確認をし、ドアを開けて外へと出た。
アパートの階段を降りたその時。車のドアが開く音が聞こえて動きが止まる。まさかとそちらへ顔を向けると、目の前に秋庭の姿があった。
「昨日はよくも無視してくれたなぁ」
バチっと音がする。秋庭の手元にスタンガンが握られている。
「あっ」
それから逃れようと後ずさるが、素早く秋庭の手が豊島の腕を握り引き寄せられてしまう。
「てめぇが悪いんだよ」
脇腹に痛み。そして意識が薄れていく。
最後に耳に残ったのは秋庭のガラガラした声だった。
はじめてのバイトで緊張していた。
見た目がかわったからといっても性格まですぐには変えられない。はっきりいえば自分に自信がなかったのだ。
だが、久しぶりに会った秋庭は優しくしてくれた。しかも自分が同級生の豊島だと知った時、驚いていたけれど、頑張ったな凄いと言ってくれたのだ。
付き合いやすくていい人。高校の時は話したことすらなかったので、友達になれたことが素直に嬉しかった。
だが、しだいに秋庭の態度がおかしくなっていく。ねっとりとした視線でみられるようになり、やたらと触れられるようになった。
それでも友達だしスキンシップだろうと我慢していたが、秋庭と少しずつ距離をとるようにしたのだが、彼の態度が一変した。無理やり家へと連れていかれて何かを飲まされたのだ。
身体が熱く疼く。下半身のモノは張り詰め、触れられるだけで身体が感じた。
秋庭はにやにやとしながら身体を撫でたり舐めたりし、下半身のモノへと触れた。
それは前だけではなく後ろへもだ。中を指でほぐして自分のモノを突っ込んだ。揺さぶられて、何度も放ち、身体も心もズタズタになって。そのあと、気持ち悪くなって吐いた。
それからずっと避けていた。住んでいたところも変えた。
着信拒否にし、大学も一人ではいかないし、帰りも誰かと一緒にいた。
もともと女が好きな男だ。いつまでも執着などしないだろうと思っていた。
ゆえに姿を見せなくなり、やっとあきらめてくれたと思っていた。それなのに。
体中につけられた痕に吐き気を覚え、急いで水を流し中のものを吐き出すが、何も食べていないので出てくるものは胃酸だけだ。喉がカッと焼けるような痛みを覚えて涙が零れ落ちる。
何度も口の中をゆすぐけれど、気持ち悪さは取れなくて、豊島はそのまましゃがみこんだ。
身体中にちらばる赤は消えても、心の中にそれは汚点として残る。
指でその痕にふれ、軽く手を握り締めた。
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