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22.その訳

 ――数日後。ルーカスは教室で景介(けいすけ)頼人(よりと)と共に昼食を取っていた。三角形を形成するような並びになっているため、ルーカスと景介は頼人の方に体を向けている。  教室内にはルーカス達の他にも五、六組ほどのグループがある。温度差はあれど各々楽しんでいる様子が見て取れた。 「相変わらずデカい弁当だな」  頼人の弁当はルーカスのものよりも一回り以上大きかった。唐揚げ、ハンバーグ、金平ごぼう、ポテトサラダ、ナポリタンといった様々な種類のおかずが入っている。 「ははっ、最近は弟達もだからなぁ~」 「弟達……?」 「四つ下に双子の弟がいるんだ」 「ふ、双子!?」 「しかも一卵性」 「それってそっくりな方だよね?」 「そっ。ウチのは特にかなぁ~。俺でも時々見間違うレベル」 「すっ、すっごい!」 「まぁ、性格は真逆だから口開けば一発なんだけどな」 「うわぁ~! 双子って感じだね。いいなぁ~」 「ん~……まぁ……うん……」  垂れ下がった眉から日々の苦労を察する。 「兄貴っつーか、親父だもんな。お前は」  景介はそう言ってコーンパンを頬張った。 「えっ? どういうこと?」  返事がない。控えめに片手をあげている。待て、ということなのだろう。行儀がいい。変わらないなと胸を温かにする。 「武澤(たけざわ)の親父は自衛官なんだ」 「っ! 自衛官……っ」  父親もまた武闘派であるようだ。()の親にして()の子ありといったところか。となると、双子の弟達にも何かしらな武道の心得があるのではないか。やはり空手だろうか。気になる。 「で、年のほとんどは家にいないんだよな」 「まあな」 「そっか……それで。……たっ、大変だね」  空手の鍛錬で忙しい合間を縫って父親の役割もこなしてきた。結果、あの頼もしさ面倒見の良さを身に付けていったのだろう。(うれ)いの種でしかない自分とは大違いだ。一人劣等感に打ちひしがれる。 「そんなことないって。そもそも父さんの代わりなんて……。兄貴にすらなりきれてないのに」  謙遜だろう。景介も同じ思いであるようだ。「お前はよくやってるよ」とフォローを入れる。 「ありがとな」  頼人は力なく笑うと、ふぅと勢いよく息をついた。 「この後は部活のオリエンだったな。ルーはやっぱ写真同好会?」 「え? あっ……いや――」 「止めとけ。メンバーはあの茶髪だけなんだろ?」  ちらりと景介を見る。反対されるのは目に見えている。だが、言わなければならない。胃が痛むのを感じながらも、清水の舞台から飛び降りる覚悟で口を開いた――。

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