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112.誘い(★)
「はぁっ……あっ! ……ル……ンっ……んぁ……んン……っ!」
肉欲を押し込めるように口付けて溺 れていく。温かくとろみを帯びた沼へと。
「んっ!? ぐっ、~~っ、ゴホッ! 、ッ、ゲホッ……!」
呼吸すらも忘れてしまっていた。乱れた息を整えて景介 を見る。
「っ、ごっ、ごめ……オレ……また……」
白い手が頬に触れる。そしてそのまま唇を撫で――蜜を攫 った。
「~~っ!?」
濡れた指先を舐めしゃぶる。味わうように。見せつけるように。目が離せなくなる。心のフィルムに刻み込んでいるからだ。
「甘いな」
「~~っ」
「続けろよ」
「……やっ、やっぱ安静にしてた方が――」
「あ?」
「うぅ……っ、そっ、そんな怖い顔しないでよ……」
「ったく……」
「たくって……」
「もっとエロくしてほしいんならそう言え――」
「違うっ!!」
「しょうがねーな」
「だっ、ダメ!! これ以上……ぇ……っしないで!!!」
「へぇ……?」
「あッ! ちょっ、ちょっと……っ!」
股間のふくらみに膝 が触れる。そこはゆるく芯を持ち始めていた。景介の唇が妖しく弧を描く。
「~~っ、もう!! あっ……!」
腰に脚が絡まりまた重なる。
「あっ、ン……だっ、ダメ……だって……ハッ……!」
艶めかしく腰を振り、理性の糸を解いていく。
「これじゃ寝れない。寝かしつけてくれよ。なぁ……」
熱い吐息と共に囁かれる。もうダメだ。観念して白旗を掲げる。
「……っ、お願いだから無理はしないでね」
「ああ」
「しんどくなったら直ぐに――」
「分かったから。――おわっ……!」
景介の背と膝 裏に腕を回して抱き上げる。すると直ぐに顔が近付いてきた。
「こっ、コラコラ!!!」
「ンだよ。させろよ」
「あっ、歩くから」
「止まればいいだろ」
「っ、落としちゃうから」
「キスだけで?」
「~~っ!! ……っ、ケイのイジワル」
「ははっ」
無邪気に笑う。憎らしい。悔しいのに嬉しい。訳が分からない。未だに慣れない感覚だ。景介をベッドに座らせ、全裸になる。
「ふぅ……。おわっ!?」
腕を引かれた。
「けっ、ケイ……」
淫靡 だ。一人で脱ぐことが出来ないTシャツ以外は何も纏っていない。眼下には白く引き締まった太股 がある。
「……っ」
「何だよ」
「あっ! いや……ごっ、ごめん」
挑発的な笑み。見透かされているのだろう。
「ほらっ」
「うっ、うん」
促されるままベッドに寝転がる。すると直ぐに景介が跨 ってきた。こんな大胆な動きをする時でさえ恥じらいも初々しさも感じさせない。悪く言えば手慣れている。
――他の誰でもない自分のせいだ。
全身を縛り上げる透明な鎖、錠の存在を肌で感じる。
「……後で下になるから」
「えっ?」
「だから、最初だけ」
途端に唾が重たくなる。なぜ。どうして。疑問ばかりが浮かんでは消えていく。そうこうしている間に景介の手が花茎 に触れた。
「あっ! ちょっ、ちょっと」
あろうことかろくに準備もしないまま押し込めようとする。
「まっ、待って! 久々だし、ちゃんと解さないと」
「大丈夫だ」
「けど……えっ? 何それ?」
景介の手に何かある。材質はシリコン。10センチほどの長さの中6つの玉が規則正しく並んでいる。背の順になっているようだ。根元の一番大きな玉で直径2~3センチほどある。そんな玉の下には同素材の丸い輪が取り付けられていた。
「それで解してたから直ぐに入れられると思う」
「はっ? ……えっ……?」
あまりの衝撃に言葉を失う。景介はそんなルーカスを他所に事を進めていく。
「ちょ、ちょっと待って! ゴム!」
「もう……何も喋 るな」
「でっ、でも――」
「んぐっ! はぁ……ぁ……ん……っ」
完全には解しきれていなかったようだ。交わりが深まるごとに圧迫感が増していく。
「ルー……っ、ンッ! ……はぁっ……」
のしかかるようにして唇を重ねてくる。キスで痛みを和らげようとしているのだろう。それならばと景介の中心を掴む。
「あっ! ばっ、バッ、か……っ!」
やわらかい。すっかり萎 えてしまっている。罪悪感を抱いていると、やんわりと手を退けられた――。
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