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42.野の光
思わず口にしてしまった。
「……は?」
「あっ! いや……」
気恥ずかしさから誤魔化すことも考えたが止めた。逃げに転じてどうする。これから一世一代の告白をしようというのに。自らを奮い立たせ打ち明ける。
「白くて綺麗で、繊細なところがケイっぽいなって」
思ったことをそのまま伝えた。けれど、景介 の表情が華やぐことはなかった。期待とは裏腹に影が伸びていく。
「さっさと行くぞ」
突き放すような物言いだった。このまま食い下がったとしても満足のいく結果は得られないだろう。
「うっ、うん……」
悲しみを募 らせながら橋を渡っていく。
渡り終えた二人は右手の横断歩道を渡り、ゆるやかな坂へと歩を進めた。
左斜め上に建物が見えてくる。タイル張り。色は白。1つ1つが頭2つ分ほどの高さを持っている。屋根は紅色。本を開き、伏せたような形だ。その屋根が建物の側面に作り出した三角――『妻 』と呼ばれる部分には、モザイク画で太陽と山が描かれている。
懐かしい。ここはかつてルーカスと景介が通っていた小学校。厳密に言えば体育館だ。この建物の裏には校舎がある。思い出の場所の一つではあるが、今用があるのはここではない。
備蓄倉庫の横を通り抜け、坂を下ると河川敷に出た。目的の場所はもっと先だ。菜の花の甘酸っぱい香りと輝きに導かれるまま切り立った崖の横を歩いていく。
――3年前のあの日と同じように。
「変わんねえな」
「……っ! うっ、うん。そうだね」
驚きは瞬く間に喜びへと変わっていく。
「心も同じ。今もすごくわくわくしてる」
振り返ると彼はなぜか悲痛を帯びた顔をしていた。訳が分からず無言のまま前を向く。景介が話そうとしている内容に何か関係があるのだろうか。
「あっ……」
想像を膨らませている間に見えてきた。崖の足元、やや小高いところにあるその場所が――。
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