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麗蘭に続くように凜華も立ち上がり、ワンピースに付いた埃を払いながらそっと身なりを整える。
周囲の様子を一切気にした様子がない二人は、春鈴によって開けられたドアから車へ乗り込み、並んで座る。
凜華の隣に、春鈴も並んで座る。そして、前方の運転手に向かって話し掛ける。
「もう発車して構いません。──ところで、あなたのお名前を伺っておりませんでした。わたくしは春鈴と申します」
「あたしは凜華よ。助けてくれてありがとう」
「いえいえ。俺は麗蘭」
一通り自己紹介を終えると、凜華は麗蘭に向かって手を差し出す。
凜華が差し出した手に一体何をすればいいのか分からず、麗蘭はきょとんと彼女を見つめる。
すると、麗蘭の手に彼女の両手が伸ばされていき、そっと握られていく。
「こうすればいいのよ」
優しい感触が麗蘭の手を包んでいく。
麗蘭は無意識のうちに同じように小さな手を握り返し、それに加えて少し動きを付けて振っていた。声を出して微笑む凜華につられ、麗蘭にも笑顔が見えてきた。客の前で見せるような妖艶な笑みではなく、年相応の自然な笑顔であった。
「笑っている姿の方がずっと素敵よ」
「君といると自然と笑顔が出てくるんだ」
「ほんと? 嬉しいわ!」
まるで花が咲いたように凜華が笑う。麗蘭に触れる手は離れることを忘れ、そのままずっと繋がれていた。
当の本人は凜華が喜んでいる事実に悪い気分ではなかった。むしろ、今さっきまで会っていた男とは違い、心が洗われるような清々しい気持ちにまでなっていた。
その隣にいた春鈴の少し険しい表情には一切気付いていなかった。
恩人ではあるものの、素性も知らない男に対して警戒心を抱いていた。
「ねぇ、凜華はどうして一人であんなところにいたの? 車道で危なかったよ」
疑問に思っていたことを口に出し、凜華に問い掛ける。
「本当は春鈴とお出掛けしてたんだけど、一人で先に行ってしまって迷ってたの。人が少ない道だなぁって思ってて気付かなかったの。だから、麗蘭がいなかったらあたし……」
「そうだったんだね。次からは気を付けるんだよ」
「うん! 麗蘭は何をしていたの?」
「仕事から帰ってるところだったんだ」
「どんなお仕事をしているの?」
「えーと……」
純粋無垢な少女に対して男娼と言うわけにもいかない、と麗蘭は考えを巡らせていた。
言葉を言い換えたところで結局は同じことである。保護者か何かであろう春鈴にも納得してもらえる、嘘ではないことを言おうと考えた。
そしてすぐに答えは出た。
「お客さんを楽しませる仕事、かな」
「まぁ素敵! だから麗蘭は笑顔がとっても似合ってるのね!」
終始笑顔を浮かべながら、他愛のない会話を二人はずっと続けていた。
初対面とは思えないほど凜華はよく話、麗蘭はそれに対してきちんと返していた。
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