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皐月-2

「……っ」 …始まった…  まず頭がグラグラして来る。  初めてのときは目を開けていたせいで天井がぐにゃぐにゃと折れ曲がり、ぼんやりした明かりが幾重にも重なって目に入り込んで来るのでそれだけで気分が悪くなった。  今も、ベッドがぐるぐる回転しているような感覚。たぶん、今立ち上がってもまっすぐ歩くことはできないだろう。  だんだんそれに慣れて来るのか、グラグラは徐々に収まってきて、今度は体中が熱くなってくる。 「…は」  じわん、じわん、と、体中を電流が這い回るような感覚があって、やがてそれは、すべてが体の中心へと向かい始める。  そして、そこが、だんだんと熱を帯びてくる。…固くなり、下着を、押し上げ始める… 「ウッ…」  声をあげてしまいそうになり、あわてて右手で口を覆う。  噛み締めた歯の間から漏れだす自分の吐息が、右手にかかる。 ――ハァっ…ハァっ…ッは…あ…―  人差し指の根元を噛む。  初めてのときは耐えられなくて息をするたびに女の子のような声が口から溢れ出し、止めることができないまま皐月さんをおおいに喜ばせた。  がバレないように片膝を立てたりしてみるが、どうせカメラのどれかには映っている。 『つらそうだね。早く解放してあげたら?…』 …うるさい… 『…とさし指、そのままじゃ血が出ちゃうよ?…その指は、口じゃなくて、もっと…』 うるさいうるさい! 『…うだね、ほら、楽になったでしょう。』 「あ、ぁっ」  気がつくと、シーツを握りしめていたはずの左手が、いつの間にか僕のベルトを外して下着ごと制服を下げている。 「はぁっ、はぁっ、はぁっ」  もはや右手は僕の髪の毛をつかんだり引っ張ったりしているだけで、口からは荒い息が出放題だ。  下着が下がる瞬間、そこが解放されて少し楽になった。 「…はっ…はっ…」  下をにらむと、…くそ。やっぱり、思い切り()ってる。  上半身もカメラの前にさらけ出したまま、すでに僕は半裸に近い。 「…く…」  頭を枕に押し付け、目をキツく閉じて、これ以上変なことに使わないために、両手を枕の下に突っ込んでつかむ。 「…ん…」  中心は相変わらず抵抗力ゼロのままを受け続けている。  のけぞってみたり、膝を曲げたり伸ばしたりしてみるが、肩だけはマットから離さないように気をつけている自分に気づく。 (…バカだな、僕…。)  こんなにしてまで、クスリが欲しかったんだ。今までは。  でも今日は、あのクスリが目当てなんじゃない。  クスリを断つための、中和剤を手に入れるためなんだ。 「…サイゴ、だから…ッ」 『え?なんて?』  うるさい!!皐月!! 『…さっきよりもずっと感じやすくなってるでしょ?時間が経つごとに少しずつ作用が増していくように、ちょっと改良してみたんだよね…。』 「…う、あぁ…ッ!」  皐月さんの声にすらビリビリと攻撃される。  枕で頭を強く挟み込むと、皐月さんからを受けた。 『手を下ろして。顔が見えない。』  相変わらず淡々とした音声…。…でも、その声にすらも、今の僕は抗うことは出来ないのだ。 『ショーウーブ、くん!』 「あああッ」  ひときわ大きな声で呼ばれると、僕の口からは悲鳴が漏れた。 『ククク…ッ』  ああ、良かったな!あんたのクスリは効果絶大だよ!  足元のテレビの向こうにいるウサギを、皐月さんをにらみつける。…殺してやりたい。 『いい眺めだよ。早く終わらせたら?君のためにも。』 …自分で慰めなさい、ということだ。 …なんで、ここまで反応してるのに、ひとりでイッてくれないんだ… 「…うぅ…」  すでに腰は、跳ねあがりそうなくらいに、さっきから震えが止まらない。 『…ほら、手を添えてあげれば、すぐだよ…』  イタズラっぽく、ささやくような、皐月さんの声。  皐月さんの声に、犯されているみたいだ。  目尻から涙が落ちて、はっとして右手で顔をぬぐう。  自分の荒い息が、再び手のひらに触れた。  それを感じ取りながら、  だんだん、  僕の中のどこかが、  壊れていくのがわかった。 (…もう…いいんじゃないのか…どうでも…) 「………」 (…どうせ、サイゴなんだし…)  人差し指を、今度は、指先から口の中に入れてみた。  舌で舐めてみる。  すると、恥ずかしさと一緒に妙な感情が芽生えてきた。  自分がなんだか、とても悪いことをしているみたいで、…気分がいいのだ。  の顔が浮かぶ。 (あんたの大事な一人息子は、今、見も知らぬ大人に向かって、こんなことしてるんだよ…――)  左手は、いつの間にか中心にあるそこへとのびていた… ----------→つづく

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