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第4話

「あー」 「ん?」  服を緩められたことに違和感を覚えて顔を起こした俺の目の前で、とんでもない光景を目にした。  ユキが下着の中から俺自身を掴み出し、大きく口を開けてそのまま咥え込んだんだ。 「ちょっ、お……おいっ、あ、ちょっ!」  続いてそれが見間違いじゃない証拠に、ぞくぞくした怪しい痺れがそこから駆け上がってきて声が裏返る。  ぴちゃぴちゃとまるで猫がミルクでも舐めるみたいな可愛い音を立ててしゃぶる姿に衝撃を受けて、慌てて飛び起きてその体を引き剥がす。その瞬間ずるりとユキの口の中から抜け出た己のモノ。それがてらてらと濡れているのを見て、焦りと困惑が一気に噴き出した。 「な、な、なにして……!?」 「命の恩人のヨージにもっと気持ちよくなってほしいにゃん」 「こ、こんなことしてもらうために助けたわけじゃない!」 「いやだった?」  なにが起こっているのかよく理解できないまま、とにかくやめてくれと下着に収めようとする自らが若干硬くなっているのが恨めしい。刺激に正直なのは仕方がないとはいえ、目に見えて反応されると格好がつかないじゃないか。 「じゃあ、目つぶってて。違うこと考えてていいから、気持ちいいのだけ受け取って?」  俺の手にそっと細い手を重ね、ユキはうずくまったような姿勢で俺を見上げてくる。  白尽くめの美人、しかも猫耳付きは現実味が乏しくて、そんな風に迫られると拒否する言葉が喉に詰まる。  よくわからないけどこいつはとにかくお礼をしたがっていて、その手段がこれで。 「どうしてもイヤだったら出ていくにゃあ……」  とどめのように小さな声で言われたその言葉に対して、出てけ、とは言えなかった。だって今夜はひどい雪になると天気予報で言っていて、なのにこいつはコートも着ていなくて、帰る家だって……と考える自分に冷静な自分がそんなはずないとつっこむ。  どう見てもこいつは普通の人間だし、猫が人間になるなんてありえないし、帰る家だってどこかにあるはずで。  でもだったらどうしてこいつはここに、と混乱する俺をじっと見つめたまま、ユキは「お願い」と切ない顔で哀願してきた。頭の上でぴょこぴょこと白い三角耳が揺れる。  ……そんな状態で俺にできたのは、止める手を外すことだけ。 「良かった。誰か他の人のこと考えてていいから」  ユキのほっとしたような声とともに目を閉じて力を抜くと、再び俺自身が熱くぬるりとしたものに包まれた。  ここ何年も仕事が忙しくて彼女を作る気力もなく、だいぶ前の彼女とこじれた別れ方をしてからはたまに自分で抜くくらいでだいぶご無沙汰だった。その状況でこんなもの耐えられるはずがない。 「くっ……う」  意地で、もう少しぐらい反応を見せたくなかった。俺は嫌々なんだぞとポーズだけでも取っておきたかった。  けど、正直バカみたいに気持ち良くて。  決して巧みではないけれど、だからこそのぎこちない舌の動きに思わず声を漏らすほど感じてしまう。  ユキは他のことを考えていろなんて言ったけど、そんな器用なことができるほど余裕はない。

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