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Marie は マリア になった。

ご覧頂きありがとうございます。 ─────────── ◆◆◆ 美しい金と銀の色違いの瞳からぼろぼろ涙が溢れている。 僕を抱きしめ慟哭するお前。 その美しい僕の大好きな顔に…お前の頬に手をやり呟く。 『泣かないで、僕の(あか)い鬼。 お前の昏い顔も、哀しい、苦しい顔もそんなの見たくない。 ずっと、お前に与えた【(てん)】の色の様に、にこにこ笑っていなきゃ僕は嫌だ……』 ◆◆◆ 今日もまた、いつもの夢を見た。 私の最愛の番の夢だ。 最後に見たあいつは私の大好きな天の色でなく、泣いた…朱い鬼だった。 歯を磨き洗顔し鏡を覗く。 一瞬、銀髪に銀目の現実離れをした非常に美しい男が映るが…それは幻ですぐに消え、少し泣き腫らした紫の目に金髪のくたびれた女が映った。 フランスの貴族の流れを汲む家に生まれた、医者で遺伝子工学の研究をしている女、Marie(マリー)だ。 女性らしい曲線や、持て囃されるような容貌に恵まれてはいるが、恋人や伴侶などを求める気はさらさら無い、つまらない女。 あの頃とは本当に違う。 …そろそろ、子どもたちも起きてくる。 急ぎ、支度をしてキッチンへと向かう。 子どもたちのランチを作りながら彼らに声をかける。 「お前たち、私は今日はパーティーで帰りが遅いから、シッターの言うことを聞いて、遅くなれば先に寝ていなさい」 息子たちに伝える。 その間にも彼らの好きなサンドイッチを作る。 パンをスライスしてピーナッツバターとジャムを塗り挟む。 私の得意料理だ。息子たちも気に入っている。 朝食を食べ、キッチンへ片付けに来た息子たちは口々に私に注意する。 「お袋、飲み過ぎはダメだかんな!」 「体にも美容にも悪いよ」 生意気な事を言う私の大切な子どもたち。 彼らはとても仲が良く、何をするのも一緒にしたがる。 まるであちらの番の様に、片割れの世話を焼き、片割れから世話されることを享受する。 「うるさいですよ、母をなんと思っているのです!そろそろ時間ですから早く支度をして出なさい。 はい、これはお昼ごはんです。ちゃんと好き嫌いをせずに食べなさい」 二人にサンドイッチを渡してやる。 「お袋はこれくらいしかまともなのはねーし。めっちゃ酷いメシマズだかんな?メシも当番で作るようにしないとヤバいし」 「僕は好きだよマリーさんのこれ。でも、ラズベリージャムは嫌い!他のが良かった」 失礼なことを言う息子と、偏食の多い子にお説教をしたいが時間も押している。 「遅刻したくないのなら急ぎなさい!車に気をつけて」 「「行ってきます!」」 まるで双子のように仲の良い彼らを見送り、自分も出かける支度をする。 彼らは本当に仲が良すぎて不安になるくらいだ。 あの子を引き取ったのも、息子とあの子が引き離すと互いに嫌がり、暴れたからだ。 が惹きあうのだろうか? 近いうちに何か大きなやらかしをしそうで不安になる。 私の予感は。 だから怖い。 そうこうするうちに、慌ただしい朝は過ぎていく。 化粧などは最低限、服装についてもあまり好みは無い。 今、この生は自分にとってはとても苦痛で仕方がない。 子どもたちはとても可愛い。 だが、私の…の魂が悲鳴をあげる。 ここは自分の居場所ではないと。 在るべき場所ではないと。 そう、悲鳴をあげる。 支度を終えたのは同僚のピックアップの時刻の間近。 私はこんなふうに毎日を過ごしている。 この生の終わりまであとどのくらいだろうか? つまらないわけではない、死を望むわけでもない。 だが…お前がいない。 それが寂しい。 そんな日々を私は送っている。 物思いに耽る私を車のクラクションが現実に戻す。 家を出て、迎えに来た同僚に声をかける。 「毎日、朝早くにすまないね。助かるよ」 「やあ!僕らの女神、美しいマリー。おはよう!」 彼はいつもこの調子だ。 過ぎた称賛は軽く聞こえるからよろしくない。 「ハイハイ、そんな賛辞は好まないから」 「本気なんだけれどね…」 車に乗り込み、今日の予定を互いに確認する。 そういえば彼もパーティーに招待されていた。彼は送り迎えを買って出てくれているので、行かないなら帰りの足を探さなくてはいけない。 どうにも私は傅かれ生活することに慣れ過ぎて、自分でする事が不得手なものが多い。 出来ないわけではないが、周りは私を甘やかす。 「今日は病院にも寄るから、研究所に行くのはパーティーの直前だな。君も行くのか?」 「勿論だよ!君と一緒に語りたい」 「ハイハイ、君もモテるんだからこんなコブ付きは相手にするな」 「…これも本気なんだけれどね…」 私を乗せて同僚の車は職場へと走り出した。 流れる景色もあの頃とは違う、近代的な発展した社会。 あの頃のはもっと愚かで、醜く、弱かった。 そんなことを言っては姉や友人に叱られたな。 再び今朝の夢について思いを馳せる。 私が居ないことでまた痩せていないだろうか? お前は大食いだが、私の最期の頃には私しか食べなかった。 お前の狂わんばかりの愛も毎日注がれていた。 あの頃は私を大層心配して、止められていたお菓子も沢山持ってきて、茨木(イバラキ)に怒られていたな。 妊夫に甘味はあまり良くないと、そう言われたな。 こちらに来て学んだ今ではそれらについての反論はあるが、確かに正しくもあった。 お前も私も大概な大食いだったしな。 私はお前や肉など以外はいつも菓子ばかり食べていた。 欲求だって、昔のように誰かを相手にしているのだろうか? 嫉妬で気が狂いそうになる。 お前のあれが恋しくて私の体も疼く。 今朝もあの頃のことを夢に見て泣いてしまった。 こんなことばかり考えて毎日を過ごしている。 「マリー、今日の君は元気がないけれど、どうかしたのかい?」 「なんでもないよ、夢見が悪いだけだ」 「そうかい…体調が悪いなら言ってくれ」 「…ありがとう。でも、大丈夫だ」 そろそろ職場に到着する。 また、一日が始まる。 ◇◇◇ 代わり映えのしない一日を終え、パーティーに来た。 適当に挨拶して飲んで、失礼することにしよう。 いつもの様に同僚たちの集まった内輪のパーティー。 今回はなんのお祝いだったかは忘れたが、誕生日だとか婚約とかなどの祝いだった気がする。 私はあまり人に興味を持たない。 唯一あるとすれば子供たちくらいだ。 好みの酒を一人で楽しむ為カウンターに座り、ちびちび飲んでいた。 最近、私に粉をかけてくる男と、それに気がある女が来た。 相手にするのも面倒だが、無視するわけにもいかない。 ◇◇◇ なぜ私が誰とも付き合わず、結婚もせずに種を買って、シングルで子供を産み育てている?か… 《君はとても美しいし、賢くて素晴らしい女性だ。 僕以外からも好意を持たれているだろう?》 魅力的な女性? ありがとう。 でも、称賛されるのには慣れているし、それで心は動かされない 《……………》 何度も聞かれるし、うんざりしているから話すけれど… 酔った勢いでの戯言と思われるかもしれないが、私には永遠を誓った相手が居るんだよ。 それこそ私の命をくれてやるくらいのね 《なにそれ?》 驚くかもしれないが、私には前世の記憶がある 《クスクス》 ………笑ったな? もう喋らないぞ 《いや、待ってくれ聞こう!話してくれ!》 わかったよ。なら茶化さずに聞け 《オーケイ、君も頼むよ》 《わかったわ》 私が前に生きた世界では私は所謂、モンスターの様な存在で鬼族というものだった 《(ogre)?》 そう、オーガだね。まぁ、一寸違うけれど それで、鬼族っていうのは本当に、反則的(チート)な存在でね。 まぁ、軽く説明すると食人鬼(グール)吸血鬼(ヴァンパイア)のハーフみたいな存在だ 《モンスターのハイブリッド種か?聞いているだけで強そうだな》 《血肉を喰らうモンスターでは有名どころの2つね》 そう、物凄いありえないくらいの最強種族だったよ それで前世の世界ではさらに不思議なことに、性別が多数あり、女と男だけでなく、α、β、Ωというものが存在した 《Omegaverse(オメガバース)?!》 うん?オメガバース? あぁ…知っているのか。 なら話は早いな 《なに?なんだいそれは?》 《あ、後で教えるわっ!とりあえず先をお願い!!》 ん、良いのかな? それでだ、私は前世では男でオメガの性であり、夫は男でまぁ…アルファ性のカテゴリーに入るのかな?あれは 《それはおかしいでしょう?!ベータは?それに夫のアルファ?ってなんで疑問系なのかしら?》 うん?鬼族っていうのはアルファかオメガしか居ないんだよ。 始まりが男のアルファのみの種と男性のオメガの種が番い、できたものだからね。 どちらかしかいない。それで途中でどちらかに分化するわけだ。 それから夫は始祖の直系の子で、、非常に強い存在だった だが、とても色々と問題を抱えていて…本当に頭の痛いやつだった

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