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Lily 、Plum と Indigo を叱る。そして、百合が銀の君になるまで。
私の目の前にいる子達にどうお説教をするのか悩んでいた。
恋をすること。
愛すること。
それを怒るのはおかしい。
だが、色々とこの世界で生きていくのに大切なことや、注意する事がある。
そこから話をしていくことにした。
「お前たち…」
神妙にする子どもたち。
私はゆっくりとだが、強く言葉に力をのせて話しだした。
「この国は自由の国だとか言われてはいるけれど、私がランディを一人で育てるのにはそれなりに苦労もあったし、女で研究者をするのもとても大変だった。」
前世 の様に実家には、両親が随分遅くにやっと出来た子である自分しか跡取りがいなかった。
先祖からの仕事や財を継いで欲しい親と、やりたい事を勉強する自分とで対立や、ランディを産んだことなどで軋轢があった。
結局、孫可愛さなどで両親は折れたが、身一つでこの国に来て色々な奨学金を貰い女など捨て、がむしゃらに学び、現在の地位に就くまでに相当な労力を要した。
『弱く、儚く、美しい』そんなものでなくても、性別による軽視や 差別と言うのはどこにでもある。
『皆が平等に幸せになるための祝福です。』
そのように僕たちに呪いを与えた『神』。
お前の理想なんて実るはずもない。
あちらとは違い、様々な禁忌 があるこちらでは、あいつの側近の四童子の親のように兄弟姉妹で番い子を成したり、男同士や女同士で番うことも忌避されている。
最近では色々と認められてきてはいるがまだまだだ。
そんな彼らを擁護できるのは自分しかいない。
「あなた達がそれでも人とは違うことを貫くことができるなら、それをずっと大切にしなさい。」
きっと強い意志と愛でもって守っていくだろうが、私とあいつでさえ色々と大変だった。
周りを振り回しては怒られ、呆れられた。
そんな私の言葉に目をぱちくりさせて、驚く子どもたち。
私が激怒して、お前たちを引き離すとでも思ってていたのだろうか?
そんな狭量な母ではなかった筈だ。
『運命』と出会い離れたくないと嘆くお前たちに、コリンを引き取りここから学校に通えと提案したのも私だよ?
その後にコリンと学力差があるので一緒の学校に通えないと告げたら、ランディをコリンが猛烈に扱き、二人が同じところに通うことになって、少しばかり寒気を覚えたが…
思えばその頃からお前たちはこうなると思っていた。
「お袋、良いの?」
「マリーさん…」
怯え、驚きながらも返してくる小さな番たち。
今更なにを言っているんだろうか?
私に話すまでそれなりに勇気が必要だっただろう。
何も言わず隠していることも可能だった。
だが、それをせずに私に報告をした。
大切な子たちが早くもそんなふうにして、巣立ってしまうのは残念だが、私はそれを認め祝ってやることにした。
「お前たち、こちらに来なさい。」
二人に声をかける。
やってきた子たちを、両手で抱きしめ、頭を優しく撫でてやる。
あいつにされて嬉しかったこれも、私の子どもたちにしてあげている。
黒 も小さい頃大好きだったし、……私の最期の時にもこうして抱きしめて声をかけたな。
素晴らしいオスに成長したあの子にも、このような愛するものが出来ただろうか?
そうして幾らかの時間を過ごした。
僅か数分、何も語らずただただ抱きしめて、撫でた。
こんなふうに私もまたあいつに慰められたい。
そんな欲求がまた湧いてきて泣きそうになる。
漸く気持ちも落ち着いた私は、彼らにもう一つしなければいけない話を切り出した。
「さて、ここからはお説教の時間です。」
これはこの子達のためにもちゃんと教えておかないといけない。
ランディは勿論だが、コリンは預かっている大切な子だ。
健康などを害してしまうわけにはいかない。
「へ?!」
「ふぇ?!」
幸いにも私は医者だ。
必要な知識を授けることもできるし、検査などの手配もできる。
「もともと男同士でそういった事をするには、色々と準備が必要だし、病気の予防や検査なんかも…………」
あちらと違いこういったことに注意をちゃんとしなくてはいけない。
再びあちらに生まれるその日まで、お前たちはこちらで精一杯生きなければいけないのだから───
◇◇◇
前回のパーティーでの話が、何故かかなり好評を博したらしく、また続きが聞きたいと言われ、話すことになった。
私の好みの酒やツマミも出すと言うのですることにした。
『運命』と番った子たちを、見ていると思い出に浸りたかったのだ。
──さてと、皆からなんだか物凄く期待されているんだけれど?
この間の終わり方だと、精神病患者扱いでもされるかと思っていたけれど?
《作り話としてはかなり面白かった。》
《荒唐無稽過ぎて創作物としか思えない。》
《マリーの『萌』はちょっと独特ね。》
そう……
《マリーの理想の男についてもっと知りたい!》
《夫婦?になった二人はどうしたんだ?》
《リリィは逃げたのか?》
あー…この間続きだと、あいつはなんというかもっと酷くて危険だな。
《シュテンの危険はなんか怖いな。》
《最強のモンスターなんだよな?》
《赤ちゃんはどうなった? 》
《なぁ、マジに男に子ができるのか?!》
《オメガバースってそういうものよ。》
あ、それもあったわね。
あの子は元気にやっているだろうか?
重責に負けていないか心配だな……
《マリー!トリップしない!!》
ん?あぁ…じゃあ、この間の続きからにしようか。
お酒は…あ、ワイン?私はそれとライスワイン についてはうるさいよ?
それじゃあ、語ろうか。
いきなり番にされてから、子供を授かり、夫婦として暮らし始めた百合 が、いかにして『銀の君』とまで呼ばれる様になったかを。
本当は、それよりもう一つの【名】が有名だが…私は好まない。
《『銀の君』?》
《もう一つの【名】???》
前に言っただろう?あちらでは強い力を持つ存在の【名】は恐ろしくて呼べなくなる。
それで通り名みたいなもので呼ばれるようになるんだよ。
あいつは出会ったときから、私に了承も得ずに有ろう事か勝手にヒト…鬼なんだが、それをやめさせられた……
《えぇ?!》
《ハァ?!》
《シュテンはいつも何かやらかすな。》
あ、ドン引いてるね?
自分と同じ存在にする為に、鬼族でも禁忌的な事で色々とやっちゃいけない事を、今までに話した中で既にしている。
出会った直後からだよ!!
あいつに捕まった事が、もう既に私にとっては災難どころでないものだったんだよ………
───────────
デキ婚した二人がちゃんと夫婦になり、百合も大人になって行きます。
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