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第一章
高校の入学式、日向の目は壇上で新入生代表の挨拶をする人物に釘付けになった。
彼の名前は北井浩也。
ずっと抱き続けていたその感情の名前はまだ分かっていなかったけれど、二度と会うことは叶わないと思っていた相手の顔を、その時の日向はただ見つめる事しかできなかった。
***
「なあ、お前外部からの受験組だろ? 名前は?」
入学式が終わったあと教室への移動中に、突然背後から声を掛けられ振り返ると、見上げるくらい身長のある生徒が笑顔を向けていた。
「っ僕?」
「そうそう。俺は小此木亮 」
「矢田部日向といいます」
そのまま横に並んできた彼に促されて歩きだす。
「入学式同じ列だったから俺たち同じ特進クラス。これからよろしくな」
「僕の方こそよろしくお願いします」
「じゃっ今から友達って事で、俺の事は亮って呼んでいいから、俺も日向って呼んでいい?」
「とっ友達!?」
色白な日向の顔がみるみるうちに赤くなるのを見て亮は首を傾ける。
「駄目かな?」
困ったような表情を見て日向はあわてて首を振った。
「友達になりたいです! 僕なんかで良かったらよろしくお願いします」
「おぅ。良かった……おい、真っ赤だぞ? どうしたんだ?」
「あの……嬉しくて」
亮を見ながら微笑むと、なぜか亮まで赤くなる。
身長が165センチほどの日向が180センチを越える亮を見つめると、自然に上目遣いに見え、睫毛の長い大きな瞳に見つめられた亮はドキリとしてしまう。
「大げさだなぁ……日向は。まあ中学からの持ち上がりが多いから、友達できるか心配だったのも分かるけど……おっ、教室着いちまった。また後でな」
「うん。ありがとう」
出席番号順に割り振られた席へ移動する日向の後ろ姿を見ながら、亮は深く息をつく。
「あれはヤバイなぁ……」
「綺麗な子だね」
「だな。お前みたいに性格キツかったらあまり狙われないんだろうけど」
横から聞こえた幼馴染みの声に、視線は日向を捉えたまま亮は答える。
「まったく、面倒見いいんだから」
横に並んだ織間佑樹 は、眉を潜め亮に聞こえないように小さく呟いた。
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