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 浩也のことを見るとは無しに眺めるのが日課になってしまっていた。  ――なんかストーカーみたいかな?  考えてみてもどうしても気になってしまい、遠巻きに気付かれないようにと思いながらも見てしまう。  亮と佑樹から聞いた話では初等部では目立たなかったが、中等部に入ってからは常に学年トップの成績で、生徒会長もこなし、先生からの信頼も厚く、性格も温厚で生徒にも慕われる存在なのだそうだ。  今はクラス委員長で、二年になったら間違いなく生徒会長になると言われている。 『それであの見た目だろ? 人気ないわけ無いよなぁ』  亮が言っていたのを思い出す。  180cmは越えていそうな長身に整った顔立ち。さきほど亮達と男同士の恋愛の話をしていたが、そういう意味でも人気がありそうだと思う。  委員長の彼が外部入学の日向に気を使ってくれる場面も何度かあった。  そんな時は間近で見る浩也にすごく緊張してしまい、なかなか上手く話せないけれど彼が気にする様子もない。  日向としては変に思われてしまってないか気が気ではないのだが。  そんな状況で自分から話しかけるなんて出来ないまま、時間だけが過ぎていく。  そして眺める度、浩也の笑顔にやはり違和感を覚えてしまう。うまく言えないが笑っているのに何だか怖いのだ。  入学式の日に、酷薄そうに見えた笑顔がどうしても頭を離れない。  ――誰にでも優しい彼をそんな風に思っちゃいけない。 「友達になるってどうすればいいのかなぁ」 呟けば、 「なに? 日向は俺達じゃ不満なの? 悲しいなぁ」  聞いていたらしい佑樹がからかうように尋ねてくる。 「そうじゃなくて」  慌て否定する日向へ笑いかけると、佑樹が顔を近づけてきて小さな声で囁いた。 「北井はやめときな」 「えっ!?」  驚いて声が出ない。  見ていたのを二人に気付かれていたのだろうか? 亮の姿を探すと少し離れた場所でクラスメイトと話している。 「大丈夫、亮は気付いてない。俺の勘が鋭いだけだよ。あいつはかなり鈍いけど」  亮を指差して笑う佑樹に少しだけ安堵する。 「やめとけってどうして?」  尋ねると、佑樹はちょっと困ったように微笑んだ。 「なんとなく……ね。なにもないかもしれないけど、俺、誰にでも平等に優しいとか気味悪いって思っちゃうんだよね。完璧過ぎて嘘臭いっていうか……俺の性格がひねくれてるのかもしれないけど。まあ日向の考えたようにしたらいいけど、俺はオススメしない」  いつになく辛辣な意見に日向は驚く。けれど自分を思って言ってくれたのは分かったから嫌では無かった。 「心配してくれてありがとう。佑樹くんはひねくれてなんてい無いと思うよ。でも、頑張って話しかけられるくらいにはなりたいんだ。無理かもしれないけど」  思った事を伝えれば、 「分かった。でも困った時は俺達に相談しなよ」と告げられる。  ありがとうと返事をした時、予鈴が昼休みの終わりを告げた。

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