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慌ただしく過ごしているうちあっというまに七月に入り、期末テストの最終日……日向は悩みの中にあった。
最近、亮と佑樹の様子がどうもおかしいのだ。
佑樹はいつもとあまり変わらない感じだけれど、亮は佑樹に何となくよそよそしく、いつもみたいに喋っていても以前とは何かが違う。
思い切ってテスト前に亮へと尋ねてみたものの、
『心配いらない』
と笑顔で返されてしまったら、それ以上聞くことができなかった。
親友同士の二人に何かがあったのならば、夏休み前に仲直りして欲しい。
「今日、先生に手伝いを頼まれちゃったから、先に帰ってもらってもいい?」
日向が亮と佑樹に告げると、亮はあからさまに動揺した。
「待ってるから日向も一緒に帰ろうぜ。昼飯持ってきて無いだろ?」
「ううん。昨日時間がかかりそうって言われてたから、持ってきてあるんだ」
初めて嘘をつくことに内心ドキドキしながらも、笑みを浮かべて返事をすると、
「分かった。日向がんばってね。亮、帰ろう」
少し時間を置いて佑樹が言う。
――バレなくて良かった。
二人きりで話せる時間を作ってあげたかったけれど、そう素直に言ってしまうと受け入れてはくれなそうだから、あえて嘘をついてみたのだがどうやら成功したようだ。
教室から出ていく時、ドアのところで佑樹だけがこちらを振り返り、その口が『ありがとう』の形に動いたから……佑樹にだけはバレていたのだと分かったけれど構わなかった。
親友同士の二人の中に入った日向が、少しも疎外感を抱いた事が無いのは、二人が本当に優しいからだと感謝しているから、どういう理由か分からないけれど、二人がギクシャクしているのは胸が痛い。
――あの二人なら、大丈夫だろうけど。
本当は昼食など持ってきていないから、一時間ほど時間を潰して帰ろうと考えて、自分の椅子に座って外を眺めると……校庭では部活動を再開した運動部の生徒たちが走っていた。
***
ふいに肩を叩かれて、日向はビクリと体を震わせる。
「矢田部?」
聞こえた声にまたもや驚き顔を上げると、どういうわけかそこには浩也が立っていた。
「あっ……北井くん」
どうやらつい眠ってしまったらしい。
浩也の顔を近くで見て、眠気も一気に吹き飛んだ。
「ごめんなさい。寝ちゃったみたいで……起こしてくれてありがとう」
慌てて言葉を繋げると、
「いや。気持ち良さそうに寝てたからちょっと悩んだんだけど、もう三時だから起こした方がいいかと思って」
笑みを浮かべる浩也を前に、一気に体温が上昇する。
「えっ、三時? 三時間も寝ちゃった。起こしてくれて良かったです。ありがとう」
「矢田部はこんな時間まで何してたんだ?」
尋ねられ、今更ながら浩也と二人で話をしている事に気がついた。
途端に緊張してしまい、「北井くんはこんな時間まで何をしてたんですか?」と、動揺のあまり日向は質問に質問で答えてしまう。
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