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 そんな日向に微笑みかけ、「俺は生徒会の手伝いに呼ばれてたから」と浩也は答えた。  緊張し過ぎて何が何だか分からなくなってしまっていた日向だが、ようやく自分が浩也の質問に答えていないことに気づき、答えようと口を開いた時、腹がグゥっと音を立てた。  ――うわっ。タイミング悪すぎ!  恥ずかしさに真っ赤になってしまった日向の顔を見て、浩也は笑みを深くする。 「いい音。矢田部は昼食べてないんだ。誰か待ってるの?」 「いえ、何となくぼんやりしてたら寝ちゃって。もう帰ろうと思います」  初めての会話に舞い上がり、答える声が上擦った。 「じゃあ一緒に帰りながら何か食べてこうか? 矢田部が良ければだけど」  そんなの嫌な筈がない。ずっと見ていただけの浩也と一緒に帰れるなんて嬉しいから、大丈夫だと日向は伝え、一緒に帰ることとなった。  歩きながら話す中で、二人の家はあまり離れていない事が判明した。聞けば、浩也も高校に入学してから一人暮らしをしているそうだ。  ファミリーレストランへと入り、料理の注文を終えた頃には会話にも慣れて日向もだいぶ落ち着いてきた。改めて目の前に座る浩也を見ると、こちらを見ていたらしい彼と目が合ってしまい、やはりかっこいいなと思う。  なんとなく見つめ合う格好になっていることに気がついて、慌てた日向が手元のグラスを掴んで水を一口飲んだ時、浩也が口を開いた。 「いつも一緒にいる二人はどうしたんだ?」 「今日はちょっと用事があって、先に帰って貰いました」  日向が答えると、浩也は「へぇ」と言ったあと、「珍しく矢田部が一人でいるから、喧嘩でもしたのかと思った。なんでもないならいいが、なにかあったら相談しろよ。その為の委員長だから……な?」  優しい声音と笑顔で言われた筈なのに、その笑顔が創り物じみているように見えてしまい、日向は違和感を覚えてしまう。 「ありがとう。でも、なんでも無いから」  返事をした丁度その時、料理が席へと運ばれて来て、食事をしながらとりとめの無い話をした。  内容は主にテストの話だったような気がする。  ――五年で、こんなに印象が変わるのかな?  浩也と会話を続けながら日向は不思議に思っていた。  入学してから一回も昔のように心の底から笑う浩也を見ていない。  それとも、友達だったら違うのだろうか?  浩也の周りにはいつも沢山のクラスメイトが集まっているけれど、特別仲が良い人間はいないように日向には見えた。  ――笑顔が見たい。僕を救ってくれたあの笑顔を。  その為に、もっと仲良くなって今の浩也を知りたい。  ――こうやって一緒に帰ることもできたんだから、明日からもう少し近づけるといいな。  生まれて初めて感じる強い感情。日向はそれを押し留めるように手のひらをギュッと握りしめた。  店を出た時には五時を過ぎてしまったていたが、夏の空はまだ明るい。 「俺の家、そこ曲がったマンションだから」  少し歩いた場所で言われ、別れの挨拶をしようと口を開きかけた時、 「矢田部に聞きたい事がある。いいかな?」 足を止め、こちらを向いた浩也が日向に尋ねてきた。  その表情から彼の感情を伺うことができなくて、少し怖いと感じてしまう。 「なんですか?」 「矢田部はどうしていつも、俺の事見てるの?」 「……え!?」  浩也の放った質問に、一瞬にして頭の中が白く染まった。

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