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「あっ、 あのっ、 それは…… 」
頭の中へと浩也の声が響き渡り、知られてしまっていたことに動揺した日向は声を詰まらせる。
そんな日向の姿を見て、浩也は軽くため息をついた。
「否定しないんだな。そんな気がしたから聞いてみただけで、確証は無かったんだけど……矢田部はなにか俺に言いたい事でもあるのか?」
聞かれて思わず固まってしまう。
自分のした対応のせいで完全にバレてしまった。
気持ち悪いと思われていて、それを聞くために一緒に帰ってくれたのかもしれない。だけど『見ていない』としらを切ることが日向にはできなかった。綺麗事かもしれないけれど、できるだけ嘘をつきたくないし、そもそも嘘をつく事にまで頭が回らなかったのだ。
そんな日向だから、浩也からの質問に正直に答える事しか出来ない。手のひらを握りしめ、口を開いた。
「気持ち悪い思いをさせたならごめんなさい。僕、北井くんと仲良くなりたくて」
「仲良くって、友達ってこと?」
尋ね返された日向がコクリと頷くと、浩也がクスクスと笑いだした。
「矢田部の反応見て、告白でもされるのかと思った。友達……ね」
「こっ、告白?」
思わぬ浩也の発言に、驚いた日向は視線を逸らして俯いてしまう。
「北井くんの事を知りたくて、でも緊張して話しかけられなくて……」
「知りたいって俺を? なんで?」
「本当の笑顔が見たいから」
ずっと思っていた事が、唇から滑り出てしまい日向は慌てて口を抑えるが、その瞬間両肩へと重みを感じてビクリと体を震わせる。
浩也が肩を掴んできたのだ。
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