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 浩也にとっては初対面に近い存在の自分がこんな発言をして、気を悪くしない筈がない。 「ごめんなさ……」  肩を掴む手の力が急に強くなったため、謝罪の言葉は途切れてしまう。ギリギリと音がしそうなくらいに力を込められ、痛みに顔を歪めた途端、ふいに手は離された。 「笑顔ねぇ…… こんな所で立ち話もなんだから、家に上がってくか? 」  見上げると、その行動とは裏腹に……浩也は笑みを浮かべていたから、日向はかなり戸惑ってしまう。 「でも…… 迷惑じゃ」  痛む肩が危険を警告してきているような気がして、日向は浩也と距離を取るように無意識のうちに一歩下がった。 「道で長々と立ち話も疲れるだろ。 矢田部が選んでいいよ。部屋に来たらこれからの事をゆっくり話せる。ここで別れたら明日からは俺を必要以上見ない普通のクラスメイト。余計なお節介とか詮索はしないで欲しい」  言われて思わず息を飲む。  見れば、今まで一度も見たことが無い冷たい笑みを浮かべる浩也と目が合った。  ブルリと体に震えが走る。  不愉快な発言をしてしまった日向をただ突き放す事もできるのに、どうしてそんな提案をするのか、分からなかった。だけど、ずっと想い続けていた彼のこんな表情を見た後で、このまま帰るなんて嫌だと日向は思ってしまう。  本当は……この感情を表すのに一番近い言葉を、日向はこの五年間でとっくに導き出していたから。  気づかないふりをしてみても、その気持ちは入学式から日毎に大きくなるばかりで、誤魔化しようのないくらい膨れ上がってしまっていたのだ。  せめて、浩也に気づかれないようにしようと思っていたが、それさえも見透かしているような彼の瞳に飲み込まれるような感覚に陥る。

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