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「男だけど、北井君のことが好きだから、セッ…セフレでもいいから、側に置いてほしい……です」  今この瞬間、日向へと与えられた二つの選択肢の中に、選べるものが他になかった。  間違えたことに気づいても、それを修正する術を日向は知らない。  浩也を好きだと認めてしまえば、こんなに暗い表情をするようになってしまった彼の、何でもいいから役に立ちたい一心だった。  細い糸のような関係でも、自分から切るなんてことはしたくなかったのだ。  心を決めてそう答えると、少しだけ……温度が下がったような気がした。 「へぇ、いいんだ」  少し驚いたような顔をした浩也からの問いかけに、「はい」と日向が返事をすれば、 「じゃあ、気が変わらない内にしようか」 言われて日向は動揺する。 「今から…… ですか?」 「嫌ならいいけど、理由も無く拒まれたり逆らったりしたら終わるから。あと、最初に言っとくけど"嫌"って言われても止めない。 そうだなぁ"止めます"って言ったら終わりにしてあげるよ。関係ごと……な」  そう言われてしまえば断ることが出来なくなる。日向は喉の奥から声を絞り出すように「分かりました」と答えた。 「分かった? 『止めます』たがらな」  念を押すように言われてコクリと頷く。  今、浩也は優しいと思えるような表情をしているが、それが形だけの物だと日向には分かってしまった。  彼はこの関係を、日向が自分から切るようにと仕向けているのだ。 「一人暮らしで唯一の親族は海外だったっけ?  明日は土曜で休みだからゆっくりできるな。セックスは初めて?」  問われた日向は小さな声で「はい」と頷いた。 「 だろうな。それはそれで面白そうだけど…… じゃあ始めようか」  浩也に促され立ち上がり、リビングを出て廊下にある部屋の一つに連れて行かれた。そこは大きなベッドとチェストしか無い空間で、色彩はブラウン系で統一されている。 「ここはゲストルーム。ヤる時はこの部屋だから」  背中を押されて中へ入ると、背後からドアが閉められる音が聞こえて日向は身震いした。浩也はそのままベッドに座り、日向に手招きをしてくる。  緊張しながら彼の前へと移動した日向の足は、既にガクガクと震えていた。

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