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第2章

   第二章 「おはよう日向、今日は遅いな」  月曜日の朝、教室へと入った日向に気付いた亮が声をかけてくる。 「おはよう亮くん。寝坊しちゃって、あれ?  佑樹くんは一緒じゃないの? 」  教室を見渡すが、佑樹の姿がどこにも無い。 「ああ。トイレじゃね? 」  そう答える亮の顔がいつもと違うように見え、もしかしたらまだ仲直りが出来ていないのかもしれないと心配になる。  すると、内緒話をするくらいの距離に亮が近づいてきた。 「何? 」  首を傾げて訪ねると、 「俺と佑樹の事、心配してくれてたんだってな。 もう大丈夫だから、ありがとう」 小声で告げられた内容に、ホッとした日向は笑顔になる。 「良かった。じゃあ仲直りしたんだね」 「まぁ…… そんな感じかな? 」  答える亮の顔が少しだけ赤い気がして、日向が不思議に思っていると、いきなり背後から抱きつかれた。 「ふわっ! 」  驚きのあまりおかしな声が出てしまう。 「おはよー日向。寝坊? 後ろの髪跳ねてるよ」  後ろから聞こえた佑樹の声に、安堵して肩から力が抜けた。日向は不自然にならないよう、その腕からスルリと抜け出し正面から佑樹と向き合う。  どうやら、触れられる事に対してかなり過敏になっているみたいだ。 「おはよう佑樹くん。仲直りできたみたいで良かった」  佑樹にも笑顔で伝えると、少しバツの悪そうな顔をされて、おかしなことを言ってしまったのかと心配になるが、すぐに笑顔で頷く佑樹に安心する。 「まあ、良かったんだけど、その事で昼休み日向に聞いてもらいたい事があるんだ。あまり人には言えない話だから昼飯は中庭でいい? 」  言われて頷く。  人に言えないってどんな話だろう? 仲直りはしたみたいだけど他に何かあったのだろうか?  そんな気持ちが表情に出てしまっていたのか? 「大丈夫だよ。心配してもらうような話じゃないから」  微笑む佑樹に頭を撫でられ少しだけ安堵した。 「じゃあ昼に」  言ったと同時にチャイムが鳴り、日向はあわてて席へ向かう。  そして、自分の椅子へと慎重に腰を降ろしてから、瞼を閉じて小さなため息をひとつついた。

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