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「おいしい」  落ち着いてきた日向はようやく中庭まで来た目的を思い出した。 「そうだ、二人の話ってなに? 人に聞かれたくないってなにかあったの?」 「ッゴホッ… ゴホッ…… 」  日向が質問を口にすると、黙々と食べていた亮がむせ始めた。 「亮ってば動揺し過ぎ」  笑いながら佑樹が亮へ飲み物を手渡す。それを飲んで少しすると、ようやく落ち着いたらしい亮が、何故か突然立ち上がったからつられて日向も立ち上がる。 「実は俺と佑樹が付き合うことになった」  回りくどい言い方を好まない亮らしく、前置きも無しに告げられた言葉に、暫くの間日向はキョトンと目を丸くして固まった。 「…… えっ?」  沈黙を破った日向の声は、驚きを現すように少しだけ裏返る。  亮と佑樹が付き合うことが友達付き合いでは無いことは、二人から天然と言われることの多い日向でも流石に分かる。だって二人は幼い頃からの親友同士なのだから。 「やっぱ日向は引くよな? 」  頭を掻きながら困ったような表情を見せる亮に対して、自分の口から出た疑問符が、悪い意味として伝わった事にようやく気付いた日向は慌てて首を大きく横へと振る。  二人が恋人になったことには驚いたが、そうなったと聞いてしまえば日向は自然に受け入れられた。 「ごめん、違うんだ。亮くん男に興味ないってよく言ってたからそれでビックリしただけ。二人は本当にお似合いだと思うよ。おめでとう」  自然と笑顔になった日向が心から祝福を伝えれば、照れくさそうに亮が笑った。 「ありがとな。最初に日向に言おうって決めたけど、引かれたらどうしようって思ってたんだ…… 俺は男には興味無いけど、佑樹のことはすげー好きだって分かったから」 「そうなんだ」  日向の疑問に答える亮の言葉は彼らしくとても実直なもので、返事をする日向の方が恥ずかしくなってしまう。

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