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 *** 「マジで? カラオケ行くの初めて?」  大声を出して驚く亮に、恥ずかしさが込み上げる。今は四人でカラオケに向かい移動している途中だが、亮の声に近くを歩く生徒達が反応し、振り返ってこちらを見るからいたたまれない気持ちになった。 「行ったこと無いだけで、そんなに驚くことかな? 」  尋ねれば、それには佑樹がすぐさま答えた。 「そりゃあ驚くよ。カラオケ行かないで、日向はどうやってストレス発散するの? 」  どうやら、見かけによらず佑樹はかなりカラオケが好きらしい。 「佑樹くんはカラオケが好きなんだね。僕も行ってみたかったから楽しみ」  カラオケがどういう場所かくらいは流石に知っている。正直歌はよく知らないが、一緒に行ける友達ができたことが嬉しかった。 「北井くんはよく行くの? 」  思いきって隣を歩く浩也にも聞いてみる。自分のほうから話しかけるのは久しぶりかもしれない。 「俺も随分久しぶりかな。 嫌いじゃないけどあんまり機会が無くて…… ヒナが誘ってくれたらいつでも行くよ」  笑顔でサラリと言われた言葉に顔へと熱が集中する。さらに、真っ赤になった日向の頬を撫でながら、 「かわいい」 などと告げてくるから思わず顔を見上げれば、柔和な笑みを浮かべた浩也が髪の毛へと触れてきた。 「お前らホントに仲いいんだな」 「まあ、 俺達付き合ってるから。な? ヒナ」  亮の発言に浩也が返した言葉を聞いて、日向は目を見開いたまま少しの間固まってしまう。どうして彼はいつも返答に窮するようなことを言うのだろう? 「ヒナが自分で伝えるって言ってたから黙ってたけど、今日言わなかったら夏休みだろ。 俺が言っちゃって悪かったけど、なかなか言い出せなかったみたいだから」  困ったような表情で話す浩也の姿を何も言えずに見ていると、 「日向、ホントに?」 佑樹が小声で聞いてきた。 「うん、そうなんだ…… ごめんね、なかなか言い出せなくて」  恋人は女性と決めている浩也だから、本心では無いだろうけれど、それが彼の望むことならばそういう事にしようと思う。  せめてセフレでいる為に。

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