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 *** 「脱いで」  玄関へと入った途端、告げられた言葉に日向は体を震わせる。  思わず浩也を見上げるけれど、返される視線は酷く冷やかだ。  カラオケが終わり夕飯にはまだ早い時間だったから、亮達とはそこで別れて(いざな)われるまま浩也の家へとついてきた。 「あの、シャワーを」  最初の時を除いては、いつも先にシャワーを浴びろと言われていたから、日向はおずおずと尋ねてみるが、 「いいから、今すぐ脱げ」  淡々と告げる浩也の言葉に無駄な抵抗を諦めて、シャツをのボタンを外し始める。 「ここ、だいぶ赤くなったな」  胸の突起を人差し指の腹で撫でられ、擽ったさに鳥肌が立った。広い玄関に全裸で立つのは本当に心許なく、背中に当たるドアの冷たい感触に、体が自然と強ばってしまう。 「カラオケ、楽しかった? 」  めずらしく優しい口調の浩也に内心戸惑いながら、 「…… はい」 と日向は短く答える。  日向にとっては本当に楽しく、終わらないで欲しいと思える時間だった。  すると、羞恥に頬を薄く染めながら小さく頷く日向の返事に、満足そうに頷いた浩也が今度は冷たい声音で命じた。 「じゃあ今度は俺が楽しむ番だ。ここで口でできるよな? ヒナ」  見上げれば、口端を上げる整った顔がそこにある。  こういう顔を見せた時には逆らってはいけないことを、この二週間、日向はその身で学んでいた。

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