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「っぐぅぅ! 」 「逃げるな」  腹に感じた鈍い痛みと冷たく言い放つ浩也の声音に、抵抗を諦めた日向はその動きをピタリと止める。こんな姿を他人に見られるなんて本当に嫌だから、チャイムを押した人物が居なくなってくれたらと心から願った。  初めて本気で逆らったのに、抗えなかった自分の非力さに涙が頬を伝い落ちる。  そして。 「遅い」  頭上から聞こえた男の声に、願いもむなしく背後のドアが開かれたのだと理解する。生温(なまぬる)い風が背中に当たり、日向は小さく身震いをした。 「悪い、コイツが暴れたから」  こんな異常な状況なのにも関わらず、世間話をしているみたいに答える浩也を理解できない。  しかも、口にペニスを受け入れたまま涙を流す日向の頬や髪の毛を、労るような優しい手つきで撫でてくるものだから、なにがなんだか分からなくなった日向はその手のひらへと……縋るように頬を押しつけ震えることしか出来なくなくなった。 「へぇ、この子なんだ……ってか、早く入れてくれない?」  ドアは開いているのだが、日向が塞いでしまっているため中へ入れずにいるようだ。  背後から声は聞こえているが、日向は思考を放棄して、瞼を閉じ、浩也の手のひらの感触に意識を集中した。開きっぱなしの唇端からは涎が零れて顎へと伝う。 「ちょっと待て、今終わりにするから」  頭上で聞こえる浩也の声は耳へと届いているけれど、その内容は理解できない。否、理解しようともしなかった。しかし、そんな逃避が彼に許されるはずもなく――。 「ヒナは、現実逃避しちゃダメだろ」  頬を撫でていた掌が離れそのまま頭を捕まれた。 「ぐうぅっ!」  硬度を保ったままのペニスにいきなり喉奥を穿たれて、強い吐き気から逃げようとするも、頭をがっちり捕まれているし体に力が入らない。 「…… っふぅぅ…ふっ」  そのまま、容赦のない律動の中で日向の体はグラグラと揺れ、奥深くまで入り込むそれを必死に受け入れて続けるうち、どういうわけか? 苦しみだけではない感覚が日向の体を支配していく。

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