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「あそこにある。ねぇ……あの子にマジなワケ? んな筈ないか。今度貸してよ」 「お前恋人いるだろ? 何考えてるんだ。逃げられるぞ」 「逃げられないように繋いであるから大丈夫。オトモダチを作ってやろっかなぁって思って。俺が連れて帰るのはタチばっかで気に入らないみたいだから、たまにはネコちゃん同士もいいんじゃない? ってね」  元々夜の街で知り合った聖一は、人当たりの良い外見とは真逆の気性をしている。  浩也とは、性癖が似通っているせいもあり、最初から気が合った。 「今はまだ駄目だが……考えとく」  口許に薄く笑みを浮かべて答えれば、 「浩也はそうじゃないと。ほだされたりなんてあり得ない……だろ?」  さきほど僅かに抱いた動揺をどうやら彼は見抜いたらしい。  腹の底の読めない微笑(びしょう)を浮かべている聖一へと、 「あれはただの玩具(おもちゃ)だ」 自分自身へ言い聞かせるように浩也ははっきり返事をした。  ***  バスルームから出てきた日向がいつものようにリビングに繋がるドアを控えめにノックすると、中から「どうぞ」と声がした。  恐る恐るドアを開ければ、リビングに設置されたソファーには、浩也一人しか座っていない。  視線だけを素早く動かし他に人がいないかどうかを確認すると、日向は安堵のため息を()いた。そんな様子が可笑しかったのか浩也がクスリと喉で笑う。 「セイなら帰った。俺もシャワー浴びてくるから、冷蔵庫にあるやつ適当に飲んでて」 「え? はっ、はい」  驚きながらもなんとか日向が返事をすると、立ち上がった浩也はそのままリビングから出ていった。

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