52 / 213

27

「ヒナ、下に降りて」  耳許で声がする。  夢中になって浩也の指を舐めしゃぶっていた日向だが、命じる声に操られ、ゆっくりとした動作でソファーの下へと降りて(ひざまず)いた。  上気して赤く染まった頬と、黒目がちの大きな瞳が艶を帯びて潤んでいる。  淫靡な姿に浩也の体は昂りを覚えるが、欲情を抑えて口角を僅かに吊り上げた。 「もっと顔を上げろ」  命じる声に素直に従い上を向いた日向の首へと指を這わせ、浩也が喉仏(のどぼとけ)(つま)む。 「これが無ければ女でも通用しそうな顔だよな」  そう言ったあと、側に置いてある袋の中から取り出したのは革製の黒い首輪だった。それを日向の細い首へと手際よく嵌めてしまう。 「黒より赤の方が似合いそうだ。少しゴツいけど、まぁセイの趣味だから仕方ない」 「なんで、こんなことするの?」 「そのうちに分かる。よく似合ってるよ……ヒナ」  はぐらかすような言葉を返した浩也もまた、黒のバスローブを身に纏っており、少し乱れた胸元からは鎖骨が見える。初めて見る色気を帯びたその姿に、日向の心臓はドキリと跳ねた。  *** 「……くぅっッ、うぅぅっ……ふぅっ」  静かな部屋には日向の呻きとモーターの音が響いている。  ベッドの上へ移動するなり拘束具を取り出した浩也は、慣れた手つきで日向の手首と足首へと革製のベルトを嵌め、さらに右手首と右足首、左手首と左足首を鎖で繋いで拘束し、そこから伸びた短い鎖を首輪へと繋いでしまった。  だから今、日向の格好は仰向けで、尻を浩也へと晒すような状態だ。  そんな日向のアナルの中へとローションを注入し、迷うことなくバイブを突き立てスイッチを入れてしまった浩也が、それをゆさぶるたびに日向の口からは苦悶の声が漏れる。 「なかなか勃たないな」  呟く声に瞼を開けば萎えた自身が瞳に映る。  拘束された体が苦しくて、こんな状態で勃つなんてことはありえないと日向は思った。 「……この辺か」  だけど、その考えは間違えだったと、次の瞬間その身をもって知ることになる。

ともだちにシェアしよう!