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目尻へと舌を這わせれば、驚いたように日向は震えた。
「……っあっ、なんで?」
怯えた声で問う日向へと、説明しようのない感情が芽生えるのを浩也は感じる。
なぜと問われても理由なんて分かる筈もない。体が勝手に動いてしまったのだから。
「よく頑張ったな」
少し優しげな声音 で告げれば、日向は涙を流しながらも、その唇へと笑みを浮かべる。
久々に見た彼の笑顔に内心ドキリとしたけれど、長い時間を一緒に過ごして情がわいたのだと考えた。
それならば、予想以上に楽しめたことだし今くらいは優しく接してやればいい。
「ご褒美に、今度どこかに遊びに行こうか」
突然優しくなった浩也から思いもよらないことを言われて、日向は耳を疑った。
「あの……本当に?」
信じられずに聞き返せば、軽く頷いた浩也が今度は頬へと舌を這わせてくる。
疲れ切った体と心を癒すような浩也の行為に、日向の頬へと朱が差した。
たとえこれが浩也の気紛 れだとしても、嬉しさが込み上げてしまう。
「ありがとう。うれしい」
嗚咽しながらも笑みを浮かべ、感謝の気持ちを伝えた途端、まだ中にあった浩也のペニスが再びその質量を増した。
驚いた日向は息を詰める。
「……あっ…なんで?」
――おしまいって言ったのに。
体を捩って逃げようとしたのは本能的な行動だったが、浩也と目が合った途端、日向は動きをピタリと止めた。
「やっぱり、もう一回な」
傲慢に言い放 つ浩也へと、逆らうことなど出来やしない。逆らってはいけないと体が覚えてしまっていた。
そんな日向の耳元へ「いい子だ」と、囁きかけると浩也は乳首を指先で弾く。
「っあ……ああ…ン」
「行きたい場所、考えとけ」
固くしこった左右の尖りを搾るように刺激され、日向は愉悦に喘ぎながら何度も小さく頷いた。
本当は、心も体もかなり限界で今日はもう許して欲しいと言いたかった日向だが、目が合った時の彼の表情に心を奪われてしまったから、素直に行為を受け入れる。
さっき一瞬だけ見せた微笑みが、昔の笑顔と重なったから。
――なにが……あったんだろう。どうして、こうちゃんは……。
ガクガクと揺れる視界の中、そんなことを考え始めた日向だが、疲れ切った体はすでに限界を越えていたようで……自然に降りてくる瞼を自分では止める事も出来なくなり、そのまま意識を手放した。
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