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後処理を済ませた浩也は、気を失った日向の体をベッドに横たえ、それから小さくため息をついた。
――俺らしくもない。
これまでは、男を性処理に使う際、相手が二度と抱かれたいなどと思わないように、情の無い扱いをしてきた。
『そんなに嫌なら男を相手にしなきゃいいのに』
聖一にも、抱いた奴等からも口々に言われた。
本当にその通りだと思う。
だけど、こればかりはどうにもならない。
憎むべき相手へと、暗い欲望を抱いてしまったあの日から。
『彼は私を愛してはいなかった。私は、男に負けたの……ずっと裏切られてたの。それに気づかないで10年以上も信じてた。何だったんだろうね、私は……愛してたのに』
病床のベッドの上で独り言のように囁やかれた言葉。
朦朧 とした様子の彼女が最期に放ったその言葉が、棘 のよう心の奥へと突き刺さり、それは今でも癒 えない傷になっている。
優しくて、でも弱かった母。
いつから彼女は気づいていたのか?
子供の頃から浩也の家へと遊びに来ていた父の親友、五月女斗和 が、ただの友人では無いという事に浩也が気づいてしまったのは、検査入院で母が居なかった日の夜中。
トイレに起きてしまった浩也は、父と彼とがリビングのソファーで睦 み合う姿を見てしまったのだ。
浩也に背中を向ける格好でソファーへと座る父親と、その上に跨がり体を揺らす斗和の恍惚とした表情を。
その意味さえも分からないほど初心 なわけでは無かった浩也は『見てはいけない物を見た』という思いに駆られ、その場を離れようとしたけれども出来なかった。
なぜなら、父の肩越しにこちらを見つめる斗和の瞳と、視線が絡んでしまったから。
いつも、自分と遊んでくれる優しげな雰囲気はその影を潜め、こちらを見ながら妖艶に微笑むその姿に……幼い浩也は生まれて初めて暗い欲望を心に抱いた。
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