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――そういえば私服初めて見た。
浩也はTシャツとジーンズというシンプルな出 で立ちだが、それがよく似合っているから、隣を歩く横顔を見ながらかっこいいなと日向は思う。
――レジのお姉さんも、見惚 れてた。
食料品の入った袋は日向が持とうとしたけれど、奪い取るように浩也が持った。
彼が買い物袋を持っているのは似合わないなどと思いながらも、休日の夕方に買い物をして一緒に歩いていることに、日向は小さな幸せを感じる。
「……暑いな」
返事を求めている様子もなくポツリと呟く声がした。
次の角を曲がった所で終わってしまうこの時間 を、日向は淋しく感じるけれど、送って貰えただけで満足しなければバチが当たるだろう。
「ここです。ありがとうございました」
アパートの前で礼を告げれば、浩也はチラリと建物を見て「まあまあだな」と感想を漏らした。
促されるまま2階の自室へ足を進め、玄関の前で荷物を受け取る。
「お茶でも飲んで行きませんか?」
「今日はいい、また連絡する」
ここまで送って貰った礼にと日向は提案してみたが、それはすげなく断られてしまい日向は少し落胆した。
離れたくないと思う自分の気持ちを知られてしまったら、きっと重荷になるだろうから、これ以上彼を引き留めるのは良くないことだと分かっているが、浩也の言う『また』が本当にあるのか日向は不安になる。
この10日間、かなりの醜態を晒したことは自覚している。記憶はかなり曖昧だが、浩也を満足させられたとは思えなかった。
今日の浩也がなんだか優しく見えるのも、捨てる日向に情をかけてくれているだけなのかもしれない。
「あのっ」
そう考えるといてもたってもいられなくなり、帰ろうとする後ろ姿を日向は思わず呼び止めた。
「なに?」
振り返った浩也に問われ、焦りながらも日向は懸命に頭を巡らせてあることを思い出す。
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