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 *** ――あっという間の一週間だったな。  梓を駅で見送った日向は、トボトボと自宅へ向かって歩いていた。  離れるのが寂しくて、『一緒に行く?』と梓に聞かれた時には思わず頷きそうになったけれど、行ってしまえば帰って来るのが辛くなるし、なにより浩也と交わした花火の約束を楽しみにしているから、日向は誘いを断った。  市内観光の時には亮と佑樹に頼んで来てもらい、お陰で地理に(うと)い日向もこの街のことを知ることができた。  梓にも、『いい友達が出来てよかったね』と言われたから、少しは安心したんじゃないかと日向は思う。  それから……洋服を買いに東京へ出たり、わざわざレンタカーを借りて高原にアイスを食べに行ったりして毎日を過ごしているうちに、あっという間に今日になってしまったのだ。  久々に良く遊んだ日々に体は多少疲れたけれど、心はかなりリフレッシュ出来た。 ――久々に一人の夕飯か……なんにしよう。  そんなことを思ったと同時に、携帯電話がメールの着信を告げた。 『いいかい、なにかあったらいつでも遠慮しないで帰っておいで。日向くんの部屋はあっちにもあるから……もしも辛い事があったら僕達の所に逃げて来るんだよ』  昨日の夜、梓に言われた言葉を思い出す。  心配しすぎだと答えれば、『日向くんは我慢強いから、いくら言っても足りないよ』と返されてしまい言い返すことができなくなった。  梓の気持ちは嬉しいけれど、これからは……守られてばかりの自分から、少しずつでいいから卒業したいと日向は思っている。  初めて章と梓に秘密を作ってしまった罪悪感はあるけれど。 ――僕は望んで側に置いてもらってる。だから……辛いことなんて無い。  そう心で唱えながら、日向は行き先を変更し、先程メールで自分を呼んだ浩也のマンションへ歩きだした。

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