＊＊＊ 　際限が無い……いつ終わるのかも分からない。 「……ぐぅぅ、っふッ！」 　日向の体は逃れることのできない責め苦の中、悲鳴をあげ続けていた。 　痺れたように感覚のないアナルの縁とは裏腹に、前立腺を直接叩くバイブが鋭い愉悦を生むから、そこから意識を反らせない。 　最初こそ、そこにいる筈の浩也へ救いを求めていたが、いくら懇願を続けてみても無音の世界が変わることはなく、次第に日向の疲れた心は諦めに支配されていった。 　唇を噛み、嬌声だけは上げないようにと必死にこらえる。それが、せめてものプライドだ。 　これまで散々恥態を晒した自覚はあるが、どんな行為をするにしても浩也が必ず側にいて、彼が求めいると思えば自分を許すことが出来た。 　だから、今の状況で悦がり声をあげる事だけはしたくなかった。 『このまま快楽に身を委せて、墜ちてしまえば楽になる』 　貪欲な体の方はさっきからひっきりなしに日向の心へと囁くれれど、目が見えず、耳も聞こえない世界の中、玩具だけで善がるなんて……きっと、後で自分が許せなくなる。 　そう考え、必死に声を押し殺していた日向だが、次々に襲う愉悦の波に抗う力は徐々に失われ――。 「うぅぅ、ふっ」 『イかせて』という懇願が、喉のところまで出かけたけれど、歯を食いしばってなんとかそれを飲み込んだ。 　けれど、そんな自分の弱さが許せずに涙がつぎつぎ零れ落ち、目を覆う布をさらに湿らせる。 ――こんなの……嫌なのに。 　なんとか逃れようと無意識に体を捩ったその瞬間、求めて止まない感触が……日向の頬を包み込んだ。 「あっ」 　緊張の糸が解けた体から力がたちまち抜け落ちた。 　縋るように自らの頬を彼の手のひらへと擦り寄せれば、長い指先が唇へと触れ形を確かめるみたいになぞる。 　指に促され、日向が口を薄く開けば、侵入してきた二本の指が舌を捉えて軽く引っ張った。 「はうぅんっ」 　思いもよらない優しい刺激に甘えたような吐息が漏れる。 　すると今度は頬を撫でていた手が離れ、ずっと日向を苛んでいたバイブの振動がピタリと止まった。 　耳からも栓が取り除かれ、アイマスクと首輪も外される。 　恐る恐る瞼を開けば橙色(だいだいいろ)の淡い灯りが点いている部屋は薄暗く、浩也は日向の背後にまわり手首の拘束を解いていた。