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「あのっ」
わずかな時間、考えに耽っていた浩也だが、かけられた声に我へと返ると、真っすぐな瞳がこちらを見つめていた。
「なんだ?」
泣きはらした為うっすらと朱 く色づいているその目許や、噛み締め過ぎたせいで少しだけ腫れてしまった唇に、浩也の心臓はドクリと大きく脈を打つけれど、それを表面には出さずに答える。
「わがまま言ってごめんなさい。もう言わないから許して下さい……側に、置いて下さい」
不安げに揺れる日向の瞳に切ないような気持ちにもなるが、それと反対に『側に居たい』と懇願してくる彼の姿に、うす暗い……歓喜にも似た感情がわきだしてきて、浩也は苦い笑みを浮かべた。
――本当に……救えないな、俺は。
「その事はもういい」
冷たい……声が出た。
それを感じたのか? 日向の体がビクリと動く。
「悪いと思うなら、俺を愉しませろよ……ヒナ」
耳許へ囁いた刹那、カタカタと震えだした日向だが、すぐに理解はできたようで、体を下へと移動させると下着の中からペニスを取り出し、躊躇無くそれを口へと含んで奉仕を始めた。
「ふぅっ……んんっ」
クチュクチュと音を立てながら、懸命に自分を貫くモノを大きく育てる日向を見ている内、浩也の心にわいてくるのは相反するふたつの感情で。
――なにを迷う、こいつは玩具 だろう?
いつものようにそう思おうとするけれど、懸命に奉仕を続ける日向の姿を見ていると、玩具だと言い捨てる事も苦しくなる。
――分かってる。俺は試してるんだ、子供じみた方法でこいつの事を……。
酷く扱って……離れなければ少しの安堵を覚え、さらに責め立てては気持ちを試す。そしてそれに耐え切れずに離れる相手を『そんな物か』と嘲笑 ってきた。
だけど日向は浩也がどんなに苛んでも、離れていく気配がない。今も必死に奉仕を続ける健気な姿を見てるうち、胸がギュッと締めつけられるような感覚に陥ってしまう。
この感覚には覚えがあった。
――俺が、こいつを……。
ひとつ答えに思い至ったその途端、浩也はやり場の無い感情の波に襲われる。衝動に突き動かされ、日向の体を引き離してからうつ伏せに倒した浩也は、その後孔を埋めるバイブを乱暴に引き抜いた。
「っひぅぅ!」
そして、衝撃に弓なりに反った日向の体を背後から抱き締め、猛った自身で一気に貫く。
「っあぁぁ!」
日向の悲鳴が聞こえるけれど、今の浩也は自分で自分を止めることが出来なくなってしまっている。
誰かとこんなに繋がりたいと感じたのは初めてで、制御の仕方も分からないから、激情の赴くままに日向を激しく責め立てた。
「っひっ…あぁっあっ……」
腕の中、カクカクと力無く揺れている日向の体を抱く腕へと力が篭る。
アカリとの約束は覚えている。だけど、今だけは……この感情に流されてしまいたい。
――今だけは。
そう自分自身に言い訳をしてから浩也は理性を切り離し、目の前にある日向の首筋へ衝動のままに噛みついた。
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