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暫くはそのままの格好でいた日向だが、徐々に震えが治まってきたため、ゆっくりと体を起こしてバスローブを身につけ始めた。
痛みは幾分緩和してきたし、万が一、浩也の客が扉を開けてしまったら、恥ずかしい姿を他人に晒してしまう事になる。
なんとか身仕度を整えた時、インターフォンが小さく聞こえ、少ししてから玄関の扉が開閉する音が聞こえた。
迫って来る足音に少しだけ身構えるけれど、部屋の前を通り過ぎて行ったため、安堵の吐息を漏らした日向はベッドの上に横たわる。と、途端に睡魔が襲ってきた。
――なんだか本当に疲れたみたい。そういえば……お客さんってどんな人なのかな?
瞼が自然と降りてくる中、日向はぼんやりと考えた。
知っても仕方ないけれど、改めて浩也について何も知らない事に気づく。淋しいような気持ちになるが、セフレという立場上、詮索をしてはいけないのだろう。
そこまで思考を巡らせたところで意識を保っていられなくなり、吸い込まれるように日向は深い眠りへと堕ちていった。
しかし、平穏な眠りは突如開いた扉の音により、終わりを余儀無くされる事となる。
「起きろ」
深い眠りについてから、まだ少ししか時間は経っていないように思われた。それでも、聞き覚えのある冷たい声音に反応した日向はビクリと身をすくませ、はっきりと目を覚ます。
「ここは今から使うから、リビングで寝ろ」
顔を上げれば、いつもに増して冷たい表情をしている浩也の姿があり、その背後には……見たことの無い男性が立っていた。
「あっ」
驚愕に、掠れた声が零れ出てしまう。訳の分からない状況に、頭の中が真っ白になった。
それでも、浩也の言う通りリビングへ行かなければならないと思い、ノロノロと体を起こしてベッドの脚から鎖を外す浩也の姿を見ていると、頭上から躊躇いを含んだ小さな声が聞こえてくる。
「浩也くん、彼は……」
「さっきまで抱いてたセフレ」
はっきりセフレと言われた事に、日向の心で何かが壊れる音がした。
確かに彼の言う通りなのだが、セフレと他人に説明されるショックはかなり大きなもので、目の奥がツンと痛くなる。
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