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「今日は止めた方が……」
「俺に抱かれる覚悟で来たって言ったのは斗和さん……貴方 だ。気を使う必要は無い、コイツは俺の言う事なら何でも聞くから。そうだろ? ヒナ」
おずおずといった様子で話す斗和と呼ばれる男性に対し、淀み無く答える浩也の声はやはり冷たくて、尋ねる声に日向は首を横へ振りたかったけれど、結果的には小さく頷くしか出来なかった。
この時日向は自分の事に精一杯で、それを見た浩也が僅かに表情を歪めたのには気づかない。
「ほら」
鎖を軽く引っ張られ、日向が慌てて立ち上がると、浩也はそのまま歩き出す。
思い切り握り締めたままだったシーツを引き摺 り歩く日向が、立ち尽くしている斗和の横を通り過ぎたその瞬間、「ごめんね」と囁く声が聞こえてきた。
あの人もセフレなの?
あの人のことも抱くの?
どうしてまだ僕を繋ぐの?
リビングにあるソファーの脚に鎖を繋ぐ浩也を見ながら次々疑問がわいてくるけれど、何ひとつ尋ねることなど出来なくて。
『相手には困っていない』
以前浩也はそう言っていた。
その意味を分かっているつもりになっていたけれど、本当の意味では全然分かっていなかったのだと日向は漸 く気がついた。
「ここで寝てろ」
鎖を繋ぎ終えた浩也が命じる声に、頷くだけの返事をする。
今、声を出してしまったら、涙が溢れてしまいそうだったから。
閉まる扉の向こうに消えた浩也に思いを馳せながら、こらえきれなくなった涙が日向の頬を伝い落ちる。
わき上がる感情の波を抑える事が出来なかった。
――ベッドに繋いだのが、彼に会わせない為だったなら、なんでこんな……。
これから浩也が彼を抱くのだという事は、馬鹿な自分でもさすがに分かる。
だけど、日向には分からない。
なぜ自分と彼を会わせたのか?
なぜ自分をここに繋ぎ止めるのか?
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