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「ひっ、セイ! イキたっ、イカせっ……ああぁっ!」
耳を塞ぎたくなるような、切なさを帯びた男の嬌声が一際大きなものとなり、暫くすると肉のぶつかり合う音がピタリと止んだ。
「お尻、痛そうだね」
「んうぅっ!」
静かになった室内へと、聖一の声が響いた途端、思い出したかのように襲った痛みで身体に鳥肌が立つ。
結局、二人がかりで洋服を脱がされ、ベッドの上へとうつ伏せに押さえつけられた。身動きが全く取れなくなり、絶望的な気持ちになる。
「ヒナちゃんは痛くされるのが好きだから、あの浩也と続いてたんだ」
「ドMってヤツ? 可愛い顔して変態なんだ」
「違うっ!」
――好きだから、だから……。
揶揄する声に、唯一自由に動く首を横へと振って答えると、鼻で笑う音が聞こえて日向は悔しさに唇を噛み締めた。
「貴司が待ってるから早く遊んであげよう。自由にしてあげるけど、逃げないでね」
聖一が、背後から日向の髪を掴んで耳許へ低く囁いたから、恐怖に体がビクリと跳ねる。
「好きなんだろ? 浩也が。あいつが他のセフレを抱くのに、嫉妬して逃げ出しちゃうくらい」
さらに、図星を突かれて真っ青になった日向が震える姿を見て、クスリと笑った聖一は、優しい手つきで髪を撫でたあと、首筋にある浩也の噛み痕にざらりと舌を這わせてきた。
「嫌っ!」
背筋を悪寒が走り抜け、日向は思わず身を捩ったが、抵抗できたのはそこまでで――。
「貸すって言った浩也の顔に、泥を塗らないようにしないと……捨てられちゃうかもよ」
「あ……」
続く聖一の言葉を聞いて、日向は体の動きを止めた。
――本当に、こんな事を許したの?
考えるが、もしも彼の言うことが偽りだったとしても、この状況では逃げ出す事など出来やしない。
日向の首を絞めた時の聖一は、表情こそ笑っていたけれど、その瞳には狂気の色が浮かんでいた。だからこそ、余計に恐怖を感じた日向は『死んでしまうかもしれない』と、心の底から思ったのだ。
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