107 / 213
43
ベッドに座り日向はぼんやりと考える。
浩也が貸すと言ったのだと、聖一は言っていた。
浩也が好きで、側に居たくて、どんな命令にも従わないといけない約束で。
だけど、自分は逃げ出してしまった。
――寒い……寒くてたまらない。
雨とシャワーとで冷えた体が小刻みに震えはじめたため、日向は布団を頭から被り横たわってから瞼を閉じた。
眠ってしまえれば楽になれると思うのに、なかなか睡魔は訪れてくれず、妙に冴えている頭の中に様々な考えが浮かんでは消える。
その中で、きっと部屋から逃げ出した時点で、浩也は自分を切り捨てることにしただろと日向は思った。
――このまま、何も言わないで終わりにしよう。
これまでは浩也に拒絶されなかったから、セフレという関係だったが側にはいられた。
だけど、臆病になった今の日向には、この一日程度の短い間に自分を襲った出来事の全てが、浩也からの拒絶だとしか考えられなくなっている。
そこまで疎んじられてるとは思っていなかった馬鹿な自分は、浩也がたまに見せる優しさに、少しだけでも好意を持たれているのではないのか? と、勘違いしてしまっていたのだ。
『思い上がるな』
そう言い放つ浩也の声が、どこか遠くから聞こえた気がして――。
「好きになって……ごめんなさい」
自然に零れた謝罪の言葉が静かな部屋に小さく響いた。
第三章 終了
ともだちにシェアしよう!