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 *** 「寝た……か」  時刻は九時を回ったところで……一時間ほど泣き続けていた日向が寝息を立て始めたのを確認すると、佑樹はそっと布団を掛けた。 『ごめんなさい』 『ありがとう』  泣きながら、日向は掠れた声で何度もそう言った。 ――話してくれると良いんだけど。  とりあえず、体が元気になったらきちんと話さないといけないだろう。場合によってはメンタルケアも必要だし、犯罪へと巻き込まれた可能性も低くないのだから。 「よしっ」  小さく気合いを入れた佑樹が、今のうちに買い出しに行ってしまおうと部屋を出て、玄関へと鍵を掛けると、誰かが階段を上ってくる足音が聞こえてきた。  反射的に目を向ければ、見えたのは見知った人物で――。 「北井」 「織間?」  不思議そうに首を傾げる浩也の姿を目に映し、対応に迷った佑樹は少しの間身動きを忘れた。  一方、佑樹の視線が動揺を示すかのように、宙を彷徨ったのを浩也は見逃さなかった。 「ヒナに何かあったのか?」  佑樹は部屋の玄関へと鍵を掛けていたのだから、今まで中に居たのは間違いない。  ならば、考えられる状況としては日向になんらかの事情があり、見送る事も出来ないような状態だということだ。 「二日前、部屋で倒れてるのを俺が見つけた。酷い熱だった。今は下がってるけど、すごく衰弱してる。寝たから買い出しに行こうと思って……北井は日向に会いに来たんだよ……な?」 「熱? 倒れたって……大丈夫なのか? 連絡が取れなくなったから、心配で来てみたんだが……」  迷いを帯びた口調で話す佑樹から、疑うような視線を向けられ、大体の事を把握した浩也は驚いた顔をして答える。  きっと、佑樹は日向の身体を見てしまったのだろう。疑っているということは、まだ日向からは何も聞いていないのだと判断し、浩也はさらに言葉を紡ぐ。

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