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『……淫乱』
――違うっ!
『自分から腰振ってるぜ、そんなに欲しいならくれてやるよ』
――違う! ……違うのにっ!
『見ろよ、コイツ微笑 ってる』
『ははっ、すげえ……娼婦 みたいだな』
――嫌っ……違う! こんなのは、僕じゃない!
繰り返される映像に、否定の言葉を叫んでみても誰も聞いてはくれなくて。
『認めちゃいなよ。自分は淫乱だって』
だめ押しのような聖一の声が頭に響く。
――違う! ちがうっ、薬を、飲まされたから……。
『そうかな、本当に薬だけのせい?』
――それは……。
ふと、額に感じた冷たさに、日向は覚醒を促された。
――夢?
ぼんやりと考えながらも、それが真実の記憶であると思い至った日向の体は、無意識のうちに強ばってしまう。
だけど、額に触れているのはきっと佑樹の掌だろうから、彼を心配させない為にも極力怯えを悟られぬように日向は小さく息を吐き出し、そしてゆっくりと瞼を開いた。
「あっ……えっ?」
まだ夢の中にいるのかもしれない。そう思えるような光景に、日向は目をしぱたかせる。
「飲め」
額から離れる彼の手のひらを半ば呆気にとられたような表情で見つめていると、口元へとストローが宛がわれた。
有無を言わせぬ雰囲気に、おずおずとそれを口に咥えてスポーツドリンクを飲みはじめる。と、喉が潤う感覚にこれは夢じゃないのだとはっきり分かり、日向は驚愕に体を震わせストローを吐き出してしまう。
拍子に零れた液体を、浩也がすぐさまタオルを使って拭ってくれた。
「……どうして?」
ようやく紡いだ掠れた声に、浩也の表情が僅かに曇る。
「今はいいから、休め」
「だけど……佑樹くんは?」
「俺が看るって言って帰って貰った。ここは俺の部屋だ。寝ている間に移動した」
「なっ」
驚きに言葉が出ない。
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