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それでも混乱している頭で必死に思考を巡らせるうち、佑樹が浩也に連絡をしたのかもしれないと日向は思った。
自分と浩也は恋人ということになっている。ならば、佑樹が浩也に連絡するのは当然と言える流れだろう。
連絡を受け、体裁を気にした浩也が面倒をみると言ったとしたら――。
――きっとそうだ。そうに違いない。
そうと分かればここにいる訳にはいかない……と、思った日向は起き上がろうとして体を動かす。
「なにをしてる」
「あの、僕、帰ります。迷惑かけて……ごめんなさい」
見覚えの無い水色のシーツを握りしめ、上体を起こそうとした日向だけれど、伸びてきた手に肩を掴まれてそのままベッドへ押し倒された。
「誰が……迷惑だと言った?」
抑揚無く告げながら、日向を見下ろす浩也の瞳には苛立ちが滲んでいるように見えるが、その理由が分からない。
――もう終わった筈なのに、迷惑じゃない理由がない。
佑樹の手前、日向を放り出せないというのなら、気にしなくても大丈夫だと伝えようと思ったのに、声を出す前に体が突然ガタガタと震えだした。
「……ヒナ?」
「ごめっ……さいっ、ごめん……」
呆然としたようにこちらを見ている浩也に対し、日向は必死に謝罪する。その間も歯の根が合わなくてガチガチと音を立ててしまった。
「怖い……事があったのか?」
囁くような小さい声で言ったあと、浩也の手が肩から離れる。
「それとも、俺が怖いか?」
尋ねてくる表情が、なぜか寂しそうに見え――。
震えは止められないけれど、せめて違うと伝えたくて日向は首を横へと振った。
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