121 / 213
14
「悪い。今日は忙しい」
一瞬居留守を使おうかとも思ったが、カメラ越しに返事をすると、
『あっそう。朝から新しい子とお楽しみ? まあいいや。届け物、ポストに入れとく。なかなか良い出来だよ』
そう答えた聖一が、持って来た物をガサゴソとポストへ入れる。
その言葉に……何かが強く引っ掛かった。
「ちょっと待て、今行く」
一言告げると急ぎ足で玄関へ向かう。
扉を開いた先に居た聖一は、その速さの為か? 少しだけ驚いた顔をしていた。
「おはよう。って言ってももう11時か……お楽しみって訳でも無かったみたいだね」
「セイ……お前、新しいってどういう意味だ」
引っ掛かった事を尋ねれば、おどけたように聖一が笑う。
「知ってて驚いた? ヒナちゃんから聞いちゃった。新しいセフレが出来たから用済みになったって……ね」
その言葉に、自分の知らない所で日向が聖一と会っていた可能性など、考えてもいなかった浩也は表情を強張らせた。
「ヒナにいつ会った?」
一つの可能性が頭を過 る。
それは、最も考えたくないシナリオで、尋ねる浩也の声は知らず低く硬質な物となった。
話の内容から考えると、もし会ったのならこの部屋から出て行った後という事になる。
「いつだったかなぁ。そうだ、今ポストに入れたDVDに日付なら入ってるよ」
飄々と答える聖一に浩也の背筋を戦慄 が走った。
「ヒナに、何かしたのか?」
状況から殆ど結論は出ていたが、それでも浩也は確認せずにいられない。
「分かってるだろ? 捨てられた玩具 を拾った……それだけ」
そう告げながら聖一がニヤリと口角を上げる様子を見て、浩也は拳を握りしめた。
「貸すとは言って無いはずだ」
「だって捨てたんだろ? それとも逃げられた? どっちにしろ拾った俺がどう遊んでも構わない筈だけど。あれ? どうした浩也、変な顔して、お前らしくな……」
怒りに駆られ思わず繰り出した右手の拳 は、聖一の手のひらによって受け止められ、彼の顔には届かない。
「……あぶないよ」
手のひらを軽く撫でながらそう言い放った聖一は、浩也を見つめ笑みを深くした。
ともだちにシェアしよう!