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「気に入った玩具(おもちゃ)で貴司と遊んだだけなのに、殴られてやる義理は無い。楽しかったよ、ヒナちゃんも楽しんでたし」 「帰れ。それ以上喋るな」  掴みかかってやりたい衝動を必死に堪えて言い放てば、聖一が肩を竦めるような動きをする。 「分かった、帰るよ。浩也がそんな顔してるの初めて見たけど、ほだされたって言うならそれを見てみることだ。ヒナちゃんの本性が映ってる。じゃ、またね」 「……っ!」  黙ったままの浩也にヒラヒラと手を振ると、聖一は扉を閉めた。  彼に対する怒りはあったが、それより自分を責める気持ちが大きくなってしまった浩也は、あまりの衝撃に少しの間そこから動けずにいたのだが、ふと我へと返り、郵便受けから封筒を取り出す。 ――見るべき……だろうか?  聖一は、日向も楽しんでいたと言ったが、本人の様子からそれは有りえないと浩也は思った。  きっと、日向が怯える理由の全てがこの中にあるのだろう。 ――ぜんぶ、俺のせいだ。  あの時、日向を一人にさえしなければ、こんな事にはならなかったと心の底から悔やむけれど、それもすでに後の祭りだ。  中身の想像はつくけれど、それでもきちんと知っておきたくて、浩也はそれを見る事を決断した。本人には申し訳ないが、日向はきっと何も話してはくれないだろうから。  見られたくない映像だろうし、知った上で自分に何が出来るかなんて判らないけれど、手の中に答えがある以上、見ておかなければならないと浩也は思った。  寝室にいる日向がまだよく眠っているのを確認し、リビングのソファーへ座ると浩也はノートパソコンを開く。 「欺瞞(ぎまん)だな」 ――色々と理由をつけてみても、本当は知りたいだけだ。ヒナになにがあったのかを。  小さな声で呟いた浩也はイヤホンをつけ、少しだけ躊躇(ちゅうちょ)してからDVDを差し込んだ。

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