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浩也の涙を止めたい一心で気付けば涙を拭っていた。
「好きだ」
至近距離から何度もされる告白に、日向の心は激しく揺れる。
日向を好きだと伝えてくる浩也の表情、そして頬を包む手のひらの温もりからも、彼の気持ちがひしひしと伝わってきた。
本当は、向き合うのは怖い。怖くて仕方ないけれど。
――僕は……向き合うことに決めたから。
「僕、僕は……」
緊張のあまりすぐに尻込みをしてしまいそうになるけれど、頬に感じる温もりから力を貰い、日向はさらに言葉を紡ぐ。
「ずっと、北井くんが好きです。諦めようって、迷惑だろうって何度も思ったけど……こんなっ、汚くて、淫乱だって言われて、もう側に居られないって思ったけど……どうしていいか分からなくなるくらい、北井くんが……」
最後は日向自身にも、何を喋っているのか分からなくなってしまうが、それが嘘のない、今の自分の全てだった。
「ごめんなさいっ。僕……」
「謝らなくていい」
混乱して思わず謝罪を口にするが、すべてを言い切る前に声は浩也の胸へと吸い込まれる。
少しして、日向は自分が浩也の腕に抱き締められている事を知った。
「ヒナ……今の、本当? 俺のこと、好きだって」
緊張しているせいなのか? 僅かに上擦 った浩也の声が頭の上から降ってくる。
言葉にできなくなった日向が頷くだけの返事をすると、抱き締めてくる浩也の腕にさらに力がこめられた。
「うぅっ!」
苦しくて思わず声を上げると、その力が少しだけ緩む。
「ごめん。俺、嬉しくて」
囁くように告げてくる浩也の言葉が胸に染みてきて、日向は自分の体の中がじわりと温かくなった気がした。
「本当に……こんな、いいの? 僕、僕は……」
「ヒナは汚れてなんかない」
続けるつもりだった言葉を、先に浩也に否定されて日向は口ごもる。
浩也がそう言ってくれても、それだけは素直に受け入れられず、日向は静かに首を横へと振り始めた。
暫しの間、二人の間を沈黙が流れる。
それを破ったのは浩也の声で――。
「ヒナに、聞いて欲しい話がある」
何かを決意したような、そんな声音に日向は思わず動きを止めた。それを肯定と理解したのだろう、彼が再び口を開く。
「俺は昔、アカリという女の子に恋をした」
意を決したように語りはじめたその内容を耳にして、日向は浩也の腕の中で大きく瞳を見開いた。
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