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epilogue
*epilogue*
「日向おはよう、久しぶり」
始業式、教室へ入ろうとしたところで後ろから声をかけられたため、日向は足を止め振り返った。
「おはよう亮くん、元気だった?」
微笑みながら答えると、心配そうな表情をした亮が話しかけてくる。
「俺はいつでも元気だよ。それよりお前……」
「おはよー日向! 会いたかったよ」
「うわっ!」
亮の言葉を遮るように背後から抱きつかれ、驚いた日向は思わず声をあげてしまった。首を捩って肩越しに見ればそこには佑樹の顔がある。
「佑樹くん、おはよう。あの……」
「もう震えない?」
この前の礼を言おうと思った日向が声を出すより早く、佑樹が小声で尋ねてきた。
「大丈夫だよ。心配かけてごめん」
佑樹には電話をかけて大丈夫だと告げていたけれど、それでも心配させていたのが伝わって、日向は胸が一杯になる。
「北井は? 一緒じゃないの?」
「学校までは一緒に来たけど、職員室に用があるからって」
「そっか。ねえ、一つだけ聞いていい?」
「な……なに?」
矢継ぎばやに質問を受けて動揺しながら返事をすると、
「日向は今、幸せ?」
囁かれた佑樹の問いに、日向は自分の顔が熱くなるのを感じる。
「うん、幸せだよ」
素直な気持ちを口にすれば、佑樹はホッとしたように息をついた。
「嘘じゃない……みたいだね。日向耳まで真っ赤になってる」
「えっ? 嘘!」
慌てて自分の耳に触れると「触っても分からないよ」と笑われ、日向の顔はさらに赤くなってしまう。
「だったらもう、何も聞かないから……日向、よかったね」
なにも聞かないと言ってくれる佑樹の気持ちに、目の奥の方がツンとなった。
「ありがとう」
微笑んだ日向がそう告げた時、正面に立っていた亮が一つ咳払いをする。
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