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「僕も……一緒にいたい」
笑顔を向けたつもりだけれど、きっと涙で自分の顔は酷い事になっているだろう。そんな日向を見た浩也は愛おしげに微笑むと、小指へそっとキスを落とした。
「ヒナが側にいてくれたら、俺はそれだけでいいから」
「僕も」
胸が一杯になってしまい、それ以上の言葉を紡げなくなってしまった日向だけれど、それでも気持ちは伝わったようで、浩也が視線を繋いだ指からこちらへと向けてくる。
「約束」
神妙な面持ちで告げてくる浩也にコクリと頷き、繋いだ小指を彼に合わせてゆっくり上下に動かした。
それは……端 から見れば子供じみた、おまじないにしか見えない行為かもしれないけれど、二人にとっては何よりも大切な瞬間で。
出会った時に交わした約束は長い間にわたって互いを支えてきた。
だけどその約束に縛られるあまり、迷い、傷つけ、すれ違い――。
今、再び交わされた約束が、どんな未来を作りだすのかはこれからの自分達次第だ。まだまだ不安はあるけれど、様々な事を彼と一緒に乗り越えていきたいと思う。
「風が出てきた。あまり当たると良くないから、中に入って見よう」
「え? 僕、大丈夫だから」
絡めた指を離しながら浩也が発したその言葉に、あまり花火を見ていない事に思い至った日向はベランダに居たいと告げてみるけれど、彼は軽く首を横へ振り日向の体を抱きあげた。
「なっ!」
いきなり横抱きにされた日向は驚きの声を上げ、降ろして欲しいと頼むけれど、「ダメだ」と言われてそのままリビングのソファーへと運ばれてしまう。
「ここからでも良く見えるだろう?」
腕に抱いたまま浩也がソファーへと座った為、膝の上に乗るような格好になってしまい、羞恥に体を竦めた日向はすぐにそこから降りようと動くが、離しては貰えなくて――。
「ほら」
浩也の声に促され、正面へと視線を向ければ、閉められた大きな窓の向こう側に次々と上がる花火が見える。
「本当だ……綺麗」
そのまま……しばらくの間、二人の空間に沈黙が訪れたけれど、それは以前のような緊張を孕んだ物では無く、日向にとっては本当に心地よいと思える時間だった。
***
「最後、凄かったね」
最後の花火が上がったあと、暗闇に包まれた部屋の中で日向は浩也に話しかける。
「そうだな」
耳元から聞こえる浩也の声。
花火の迫力に心を奪われすっかり失念していたが、彼の膝に座ったままだとここでようやく気がついた。
焦ってそこから降りようとすれば、背後から強く抱き締められる。
「北井……くん?」
「何もしないから、もう少しこのままでいてもいいか?」
囁かれて日向はコクリと頷いた。
浩也の腕の中にいると、心臓は鼓動を速めるけれど、心はとても落ち着くことを日向はもう知っていたから。
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