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「ごめん、言い過ぎた。そんな風には思ってない。分かって無いなんて言われて、つい頭に血がのぼって……本当に悪かった」
狡い……と、佑樹は思う。
亮は真っ直ぐな性格だから、自分に非があると考えれば、意地を張らずにいつも素直に頭を下げてくる。そして結局は自分だけが子供じみた意地を張っているような、惨めな気持ちになってしまうのだ。
それに、売り言葉に買い言葉なのは頭では分かっていても、いつもそう思っているから思わず口から出たのだろうと考えれば、分かっていた事とはいえ、佑樹はやり切れない気持ちに包まれた。
――やばい、泣きそうだ。
「……分かった。俺もごめん、もう帰るから」
これ以上ここに留まれば、弱った自分はおかしな事を口走らない自信がない。小さな声でそう告げると、それでも手首を離そうとしない亮を見上げた。
「離して」
「離さない。何が分かってないか聞いてない。佑樹が喜んでくれないなら、彼女なんか作らなくてもいい。俺にとっては佑樹の方が大事だから」
勘違いしたくなるようなことを言うのは本当に止めて欲しい、そんな風に言われたら――。
「俺は、亮の事を親友だなんて思ってない」
もう、どうなってもいいと思った。
これから先、亮に彼女が出来る都度、こんな思いをするくらいならば、好きな相手に気を使わせて、迷惑を掛けるくらいならば、いっそ気持ちが悪いと思われて切り捨てられた方がいい。
――こんなに、好きになってたなんて。
堰を切った感情の波が次から次へと溢れだし、止める事が出来なくなった。
「亮の事が好きなんだ。恋愛感情で」
見上げている視線の先で、亮の表情がみるみるうちに強張っていく。
「……嘘だろ?」
動揺を含んだ彼の声音に、ゆっくり首を横へと振って佑樹は微笑みを浮かべた。
「こんなつまらない嘘なんて言わないよ。亮が好きなんだ」
「佑……樹?」
手首を掴む彼の指から力が抜けていくのを感じる。
それが亮の答えなのだと思ったら、心の中で何がが崩れた。
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