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――うそ……だ。
こんな事が起こるはずが無い。
都合のいい幻覚なんじゃないか? と、佑樹は思った。
だけど開かれた瞳には亮の顔が一杯に映っていて、これが夢では無いという事を佑樹へとリアルに伝えてくる。
「……んっ!」
優しく触れた唇がそっと離れていく時、舌先で唇をペロリと舐められ佑樹は思わず小さく呻いた。
「なん……で?」
「……わかんねーよ」
驚きに掠れた佑樹の問いかけに答える声は、彼の動揺を表すように僅かに震えてしまっている。
――やっぱり、もう……止めよう。
まさかの出来事に、呆けてしまったといえばいいのか? 亮にキスをされた事で少し冷静になれた佑樹は、これ以上彼を混乱させ、困らせてはいけないと思った。
覚悟を決めて臨んだはずなのに一度弱気になってしまえば、後悔だけが押し寄せてくる。
「ごめん……もう……」
――やめるから。
そう続くはずだった佑樹の声は喉の所で嗚咽に変わった。
今の自分が情けなくて、次から次へと溢れる涙を止めることが出来ない。
言葉にする事が出来ないのなら、せめて彼を解放しなければならないと思った佑樹が、腰を持ち上げようとした時、状況は急転した。
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