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「佑樹っ」
行為の後……呆然 として声も出せずにいた亮だけれど、閉められたドアの音でようやく正気を取り戻し慌ててベッドから立ち上がった。
――早く、追いかけないと。
そう考え、手早くジーンズのホックを留めた亮だけど、ドアノブを掴んだところで先ほどまでの佑樹の痴態を思いだし……体が動かなくなってしまう。
――追いかけて……どうする?
『忘れて』と言って立ち去った佑樹を今追いかけて、自分に何ができるだろう?
「どうしたらいい?」
突然の出来事によって頭の中が混乱し、自分がどうしてあんな事をしてしまったのかが今の亮には分からない。
気づいたら彼にキスをして、そのまま彼を押し倒していた。そして、夢中になってその体へと己の欲情を打ちつけていた。
『……すき……りょう……すき』
佑樹の言葉が頭の中でリフレインする。
虚ろな瞳でこちらを見つめ、途切れ途切れに紡がれた彼の告白が……亮の心を強く締めつける。
「最低……だよな」
零れた言葉が虚しく空気に溶けていく。
懸命に好きだと告げてきた佑樹の気持ちに応える覚悟も無い癖に、突き放す事も出来なかった。
いくら混乱していたとはいえ、自分を見失ってしまうなんて本当に……最低だ。
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