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 コクリと唾を飲み込んだのは無意識の行動で、急に心臓の音が煩くなる。  こんな風に佑樹を意識するなんて、長い付き合いで初めてだった。これまでは空気のように当たり前な存在だった。少なくともあの日までは。 「本当に大丈夫? 顔、赤いみたいだけど」  立ち止まったまま動けずにいる亮の顔を覗き込み、佑樹が尋ねてくるけれど、顔に熱が集まってしまい彼の顔を直視できない。 ――忘れられるはずなんて……。  そう思った亮だけれど、だからといってどうすれば良いのかなんて分からなかった。  筋違いだとは分かっていても『どうして普通でいられるんだ』と、佑樹を問い詰めたい衝動に駆られてしまう。  動くことも出来ないまま、沈黙を続ける自分の事を佑樹はどう思っているのだろう? 「行かないと、遅刻しちゃうよ」  耳慣れた声が少しだけいつもと違うように聞こえ、思わず見遣った佑樹の顔にさらに鼓動が高鳴った。 「佑樹」  無意識のうちに指を伸ばし、その唇へと軽く触れると佑樹の体がビクリと強張る。  ハッとしてすぐに手を引っ込めた亮だけど、自分が何をしたかったのかも分からなくなってしまい……。 「亮、あのさ……」  バツが悪そうな顔をした佑樹が何かを言いかけて口を開いた、その時。 「亮くん、佑樹くん、おはよう」  背後から聞こえたおっとりとした挨拶の声に、凍りついていたその場の空気が一瞬で溶けた。 「おはよう、日向」  友人の挨拶に先に返事をしたのは佑樹の方で、さっき一瞬見せた影は表情から消え去っている。 「おはよう」  自分も笑顔で挨拶しながら、助かった……と、心底日向に感謝した。  さっき佑樹が言いかけた言葉が何だったのかが気にならないわけじゃ無いけれど、あれ以上二人でいたら、自分が何かとんでも無い事をしてしまいそうだったから。

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