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『亮と織間って付き合ってる訳じゃ無いんだよな』
1週間前。
登校してすぐに呼ばれた廊下で突き付けられた質問。
なぜそんな事を聞くのかと尋ねたら、佑樹の事を好きになった先輩から聞いて欲しいと頼まれたのだと彼は言った。
男からの告白は佑樹がとても嫌がるから、その手の問いには、
『実は付き合っている』
と今まで答えていたのだけれど、その時はどうしても嘘が言えなくて……結局、
『佑樹には好きな相手がいるみたいだ』
と、曖昧に言葉を濁してどうにか場を切り抜けた。
突然の告白を受けたあの日を境に、亮の中で佑樹を見る目が変わってしまい、昼食の時に話し掛けてくる彼の唇や、隣を歩く彼の横顔になぜだかドキドキしてしまう。
普通に接しなければならないと思えば思うほと、余計に意識してしまい、いつも通り普通に接してくる佑樹へと苛立ちにも似た感情を覚えてしまう自分自身が亮は嫌でたまらなかった。
――普通にって……どうしたらいいんだっけ?
今まで、本当に長い時間を一緒に過ごしてきたはずなのに、佑樹にどう接して良いのか分からない。
「亮、食べないの?」
――今だってそうだ。
「あ……ああ、食べるよ」
昼休み、いつの頃からか料理に凝りだした佑樹が作ってくる弁当の、半分以上をいつも貰って食べている亮は、彼の使った箸をそのまま躊躇 いも無しに使っていたが、最近は変に意識してしまい食べ方までもがぎこちなくなってしまっていた。
――なのに、こいつときたら。
あの日の事などまるで無かったように淡々と接してくる。
――俺だけ悩んで馬鹿みたいじゃんか。
そう考えると何だか悔しくなってきて、恨めしいような気持ちで弁当を眺めていると、亮の目の前に突然何かが差し出された。
「はい」
お重の上、さりげなく置かれた割り箸に、驚いた亮は目を見開く。
「これ……」
「何?」
「いや……何でもない」
聞き返してきた佑樹の声音が少し冷たいような気がして、言葉を失った亮は黙って新しい箸を手に取り弁当を食べ始めた。
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