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胸が痛む。
――やっぱり、忘れてなんか……いないんだ。
少し考えれば佑樹が忘れる筈なんて無いし、彼の性格上、無理に演技をしている事は分かりそうなものだったのに、亮の中にも余裕が無くて気づく事ができずにいた。
同じ箸を使うのが嫌な訳じゃない。
そう伝えたいけれど、それを言って何になるというのだろう?
近頃は、寝ても覚めても佑樹の事ばかり考えている。だけど柄にも無く悩んでみても、答えなんかは見つからない。
ただ、苦しかった。
佑樹が懸命に伝えた気持ちをどうする事もできない自分が、本当に情けなくてたまらなかった。
結局、何の突破口も見えないまま学校では期末テストが始まって、いつもは二人で勉強するのに、あの日以来……佑樹は部屋を訪れないから亮から誘う訳にもいかず、結局一人で勉強をした。
側にいすぎて、その存在が当たり前になり過ぎていて、佑樹と離れるなんて一度も考えた事が無かったけれど、大切に守ってきた幼馴染から距離を置かれているという事実は、亮にとってはかなりショックな出来事で……。
――ちゃんと考えないと。
逃げてばかりじゃどうにもならない。
今も学校では今まで通り行動を共にしているが、それは間に日向がいてくれるお陰だ。日向にしても何かおかしいと感じているみたいだから、早いうちにどうにかしなければならないと亮は思う。
だけど。
分かってはいるが佑樹を見ているとあの日の姿が頭を過り、己の心を平静に保つことがどうしてもできなくなる。
――男に興味なんか無かったはずなのに。
分からないといったように軽く頭を振った亮は、佑樹に欲情してしまっている自分の気持ちを、この時はまだ認める事ができずにいた。
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